第23話 尿の話〜梅と楓編〜

楓は梅寿の部屋でまったりしていた。今まで何度も招き入れていたものの、恋人同士になってからは初めての楓の来訪だった。なんとなくそわそわしてしまう。

「…そういえば楓。初めて女の子になった日、トイレって大丈夫だったのか?」

「それ!聞いてよウメちゃん、あのね、僕、朝に女の子になったでしょ?女の子になったのびっくりしたんだけど、もう、おしっこしたくて仕方なくて…」

「おっ、おし…そうなのか」

「うん。でね、女の子ってどうするかわからなくて、でも、もう漏れちゃいそうでね、どうしようってなったんだけど、女の子って座ってするんだよな~って思って」

「そう、だな、座ってな。は~、漏れちゃいそうで…うんうん、座るのか~」

「それでね、わかんないけど、とりあえず座ろうって思って、トイレでお尻だして座って、」

「お尻っ…お尻か~おしっこ…お尻だもんなぁ」

「ウメちゃん、ちゃんと聞いて?でね、座ったらもういっぱい我慢してたから、あの、すぐ出ちゃって」

「すぐ出ちゃって」

「うん。どうしたらいいかな、どこから出るかなって考えてたんだけど、あの、ちょっと出ちゃって」

「ちょっと出ちゃって」

「そうそう。あ、ここからでるんだって思ったら、もう止まらなくて」

「止まらなくて」

「そうなの、すごい、いっぱい出たの。止められなくて…でね、こんなところから出るんだ~って、なんか、えっちな気持ちになっちゃって…えへへ、気持ち悪いよねぇ、僕」

「えっちな気持ちになっちゃって」

「ウメちゃん、本当に聞いてる?」

「一言一句漏らさず聞いてる」

「だって、あそこからあんなに出ると思わなくて…気持ちよくてスッキリしたんだけど、やっぱり怖くて、泣いちゃったんだ。それでね、……ウメちゃん、あの………勃◯してる?」

「気にしないで。気にしないでほしい。今ちょっとちんこが馬鹿になってるだけだから」

「おしっこの話で、勃◯するの…?」

「引いてるよ。ごめんて。きもくてごめんて。でもおしっこだもの、楓の。想像して勃◯するよそりゃ。だって楓の、恋人のおしっこの話だぞ?」

「え、…えっ、と、…」

「ドン引き~想像以上のドン引き~。ごめんて。キモくてごめんな、こんな彼氏で!ごめんな!!」

「あ、うん…うん、平気、うん。大丈夫。平気だよ、大丈夫!でも、もう少し話してもいい?こんな話、ウメちゃんにしか、できないし…」

「全然大丈夫じゃなさそう…ごめんな、ちゃんと聞くから」

「でね、そのままパンツはいたらおしっこで濡れちゃいそうだな~って思って」

「待って待って、童貞には荷が重いな。刺激が強すぎ、るって…っ………ふぅ」

「えっ……出たの?」

「なんのことかな?女の子ってあれだろ、ティッシュで拭くもんな」

「あ、うん、そう。そう、なんだけど…賢者タイムなの?」

「そらイクよ!楓の、恋人のおしっこ拭くか拭かないかの話、ぶっ放すだろ!」

「ちょっとわかんない」

「わかんないか~出るんだ、これが。俺は出ちゃうんだ。もう、ガビガビなんだ」

「…」

梅寿と楓はしばらく顔を見合わせて固まった。

「…ごめん。パンツ変えてくる」

「えっ、ここで変えたら?」

「だめだろ。付き合ってんだし、今日、女の子だし」

「あ…そっか、そうだね、うん…ぼ、僕たち、つっ、付き合ってるもんね…」

「…」

「…」

梅寿と楓の視線が絡まる。ゆっくりと二人は距離を縮めていく。

「楓来てんだって?マツ兄ちゃんだよー」

「「わーっ!」」

松寿がノックもなしに部屋に入ってきて、梅寿と楓は慌てて飛び退いた。

「なんだよ、何してたんだよ。楓、兄ちゃんとお話しよ?」

「やだよ。僕、ウメちゃんに会いに来たんだから」

「兄ちゃん、ノックしろよ」

「冷たいな~最近の楓、冷たいな~兄ちゃん泣いちゃう。なんでウメばっか優遇すんのよ。俺の部屋もおいでよ」

「だって、僕達、つ、付き合ってるから。だからマツ兄ちゃんの部屋も行かない」

「え」

「えっ…え?いや、待って。付き合っ…付き合ってんの?二人が?ちょっと…嘘だろ、まじでショックなんだけど…」

「だからもう、マツ兄ちゃんの部屋は行かないから」

「楓…」

「な…なんで、そんなことに…嘘だろ…つか、この部屋イカ臭くね?」

「あ、それはね、ウメちゃんが」

「おーい!兄ちゃん!部屋に帰れよ、な!そういうことだから、トイレ行くから、俺は!」

「…楓、ちょっと兄ちゃんとお話しよ?こんなヤツ、やめたほうがいいって」

「帰って、マツ兄ちゃん」

梅寿はトイレに向かう。まだ居座ろうとする松寿に楓はバッサリ切り捨てて梅寿の部屋から追い出していた。楓は松寿を松寿の部屋に押し込めて「出て来ないでね」と釘を刺してから扉を閉めた。

(やっぱり兄ちゃん、楓のこと…)

なんとなく、薄っすら思っていたことだが、兄の松寿も楓に気があったようだ。肩を落としていた兄に、梅寿は少しだけ同情した。




END

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