1 地獄の現状について
地獄の建設事業は長年鬼たちが自らの業務に必死で、放置されていた案件でもあったようで現世で亡くなってやって来た技術者や発明家達、更には政治家までもが呆れ返ったらしく、改革案を独自で閻魔庁に提出されて今までそのような事業のノウハウがほぼなかった閻魔庁の役人らや閻魔様は大いに困惑し、
最初は「地獄はそういうところだから」と突っ返したそうだが、
「この地獄の環境の悪さは鬼達にも影響を及ぼし、業務に悪影響を与えている。地獄の地盤は強固であるとされているようだが、この環境ではいつ崩壊してもおかしくない」などと医学者や環境学者らまでもが提言をし、
ついに閻魔庁が天国との協議した結果、天国と地獄両方つまり、冥土改造をあの世に行った人物達に全てを任せてしまったとのことらしい。
なお、天国も環境悪化が数千、数百年と経っていくうちに進んでしまい、よろしくないとの話を聞いた。どこの世も経年変化には改善が必要らしい。
人間達(といっても死者たちであるが)は許可がおりてからというものの、早速世界中の知識人らが会議を行い、あれよあれよと言う間に建設省、農林水産省、交通省、内務省、外務省、保健福祉省、商務省、文化省、環境省、教育省、技術庁、保安庁、労働庁、開発庁、情報庁、危機管理庁、郵便庁などの省庁が出来、閻魔庁は閻魔省に昇格され、主に今まで通り司法や行事、財務、そして最終決定権を執り行う組織に改造された。
流石に政治については基本的に閻魔様が最高権力者であるということで、大統領制や首相制などは採用されなかったが、この閻魔様も今までの業務の上に更に分からない業務が増えて明らかに疲労の顔が出たため、鬼たちではなく人間らがその補佐官を務めるようになり、業務改革が行われ、
閻魔様も週休一日〜二日や、一時的な長期休暇というものが初めてできたという事で大変に驚かれたそうだ。
また、人間に大臣なども任せてしまうというのは危険という考えが閻魔省の鬼らから上がり、その結果として現在では鬼達が現世の政治などを人間達から学び、数百年前にようやく大臣や高官を務められるほどになったという。
しかし、知識人らのグループ会議が定期的に開催され、そこで新たな提言や業務改善、改革案が出され、閻魔様もそれに素直に従い、まるで傀儡政府のような状態になっている。
だが、これまで大きな改革などを行わなかった閻魔庁側に責任が大いにあると意見ばかりだったため、この件については仕方がないとも言えるだろう。
怠惰という罪を裁く側が長年怠惰していたという反省が閻魔様以下鬼達、獄卒達が課され、謝罪という異例の事態にまで至った。
これは天国などにも多大な影響を与えたようで、早急に改革がなされたらしい。全知全能の神にも人類の進化、科学などの学問の進化の速さは予測できていなかったようである。
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