現代地獄見聞録
古木しき
0 地獄へ堕ちたものの……
私は死んでしまったようだ。
私は記者として順風満帆に活動していた。あるとき、記者仲間たちとの呑み会を散々楽しみ、酔いが回っていた帰り道、ふと気がつけば私は車道に転げていた。そして――気がつくと死後の世界にいた。
思っていたのと違う。
死後の世界での天国か地獄か行きの機関はまるで市役所のようであり、鬼たちもスーツ姿で淡々と仕事をしている。天国か地獄への窓口はすぐに分かったが、長い行列である。
待ち時間が電光掲示板に表示され、番号を発券してもらうというなんとも現代チックな死後の世界である。
天国か地獄へ行くのを決める閻魔大王の元には大量の書類の山があり、それを読んではハンコを捺している。きりがない。長々と数時間、待合で待っていると私の番が来た。
「彼、どうしましょうか……。特にこれといって罪らしい罪もないのですが」
閻魔大王の側近の鬼が話している。もう少し聞こえないようにできないものだろうか。
結局、閻魔行政は悩んだ末、天国と地獄を行き来できる報道記者兼伝記作家として活動させられることになった。これも特別というほどでもなく、私は現世では比較的善い行いもしたが、多少の悪さもしているごく普通の人間だった。日刊地獄新聞という死後の世界では大手の新聞社で、たまに天国や地獄の様子を記事として書くか、エッセイを書かせられるという仕事だった。これも一応地獄の刑罰の一つらしく、怠惰でサボり癖のある人間には苦痛を伴うらしいが、私は現世では元々記者としてそれなりに楽しんで仕事をしていたので苦ではなかった。
そこで、昔のイメージとはかけ離れてしまった死後の世界をなるべく紹介していきたいと思う。
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