第96話 もう、いい!!

 柚希が風呂をあがってくるのを待っているつもりが、いつの間にか眠ってしまった。


朝、目が覚めて、なんとなく、モヤモヤは残る。


あっ、俺、なんか矢沢弘人の話しかしてなくね?

 

田坂の結婚式の話って、まともにしてないよな?


すごい大勢の盛大な披露宴だった。

田坂は、ずっとニコニコしていた。

おめでとうって言ったくらい。

昔より、大きくなっていた。


柚希が話したのは、それくらいか?

目に見える、表面的な話だけ。

なんだろう……いつも、うまく はぐらかされちゃう感じなんだよな。



ふーーーーーー


大きく息を吐き出した。


もう、いい!!


田坂に囚われるのは、もう、やめよう。


こんなことを気にしていて、目の前にある幸せを見過ごしてしまっていた。


大事なのは、前世でも、来世でもなく、生きている今なんだから。

夫婦として暮らしている今なんだから。

俺の妻である柚希を愛していこう。

今まで以上に。

俺は、妻を好きで、好きで、仕方ないんだから。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 数日後


子どもたちを連れて、ドライブに行かない?と、柚希が言った。


どこへ?

と、聞くと、新そばの時期だし、戸隠へお蕎麦を食べに行くってのはどう?

と、言った。


柚希が、自分からどこかへ行きたいと言うのは、本当に珍しいこと。


俺はそばが大好きだし、戸隠へ子どもたちを連れて行ったこともなかったから、それはいいな!って思った。


戸隠は、長野のうちの実家からだと車で1時間弱だけど、ここ横浜からだと、3、4時間はかかるな。

でも、柚希が行きたいって言ってるんだし、ドライブに行くことにしよう。

今週末、土曜日がたまたま非番だったから、その日に出かけることにした。


長野県は、そばどころで、県内でもいろいろと有名な産地がある。

ざっくりと、『信州そば』って、ひとくくりにされがちだけど、地域によってそばの種類も違う。

その中でも、俺は戸隠そばが1番馴染みがある。

地元では有名だけど、まぁ全国区ではないとは思うが。


戸隠には、戸隠山という山があって、戸隠神社がある。

戸隠山は、古くは修験者が修行の為に訪れていた険しい山だ。

もっともっと さかのぼれば、日本神話の天の岩戸伝説の残る場所。

天の岩戸を開いて、天照大御神を洞窟から出して、その岩戸を投げ飛ばしてできたのが戸隠山ですってゆう神話。

さすがにそれは、フィクションだと思うけど、

そう言ってしまうと、日本神話ってものを全否定することになってしまいそうだから、まぁ、伝説のすごいパワースポットだよ!ってことにしておこう。

それと、戸隠流の忍者の里としても有名だ。

あ、これも、地元では有名ってくらい。

伊賀や甲賀の忍者と比べたら、全然知名度は低いだろう。

知る人ぞ知る!って感じ。

でも、ちびっこ忍者むらとか、忍者屋敷とか、子どもたちが楽しめる施設もあって、俺も子どもの頃に親に連れていってもらった。


次男の奏は、今5歳だけど、戦隊モノとか、仮面ライダーとか、そうゆう系が大好きだ。

今やっている戦隊モノのコンセプトが忍者らしい。

俺は観たことないんだけど。

家にも、オモチャの刀や鎌?、手裏剣が落ちていたりする。

オモチャだけど、当たると何気に痛いやつ。

仕事から帰ると、よくリビングで奏の相手を、柚希がして戦っている。

だから、ちびっこ忍者むらに行くのもいいな、と思った。




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