第94話 ただいま

 仕事から帰ると、家に柚希と子どもたちが帰ってきていた。

ただいま、とリビングに行くと、奏が走ってきてジャンプして俺に抱きついた。

「パパおかえり~」


「ただいま。 奏もおかえり」


「奏もおかえりしたよ~」


かわいいな。

 


キッチンから柚希と、峻がきた。


「とおる、おかえり。ありがとうね」


「どういたしまして」


言いたいことは、いっぱいある。

だけど、それは今じゃないだろう。

子どもの前で、言い争うようなことはしたくない。



ちょうどグラタンができたとこだよって言われて、慌てて部屋着に着替えて、テーブルについた。

やっぱり、柚希の手料理が1番美味い。

野菜が多めの献立。

峻も奏も、好き嫌いなく野菜を食べられるのは、柚希が食べやすいように工夫してくれているからだろう。

俺は、子どもの頃は、ナスとピーマンが大キライだった。

じいちゃんが畑で作っていて、夏の時期はアホみたいに収穫してきて、イヤイヤ食べさせられた感じ。

だけど、今は大好き。

ピーマンなんて、軽く素揚げしてしょう油と七味唐辛子をかけただけのやつを、いくらでも食べれちゃう。

子どもたちは、ピーマンの肉詰めが大好きだし。

柚希は、凝った料理も作ってくれるけど、新鮮な野菜はそれだけで美味しいからって、サラダなんて、てんこ盛りで出してくれる。

手作りでサッと混ぜ合わせるドレッシングが、絶妙に美味しい。


家族で食べる食卓。 

柚希の手料理。

俺を慕い抱きついてくれる子ども。

幸せな家庭じゃないか。

これ以上、なにを望むと言うんだ。

もう、いいじゃないか。

柚希が、田坂のことを想い続けているとしても、

それで、俺をないがしろにするわけでもない。

ただ、俺自身の気持ちの問題なだけだ。

柚希の料理を食べながら思った。

柚希がいてくれるだけで、俺は幸せだ。



 夜になり、子どもたちを寝かしつけて、柚希が寝室にきた。

だいたい いつも、柚希が寝かしつけてる間に、俺は風呂に入る。

だけど、今日は入らずに柚希が来るのを待っていた。


「あれ?とおる お風呂まだだった?」


「うん、ゆきと一緒に入りたいと思って」

 

「えっ?珍しいこと言うね~。 

じゃ、先に入ってて。あとから行くから」


嫌そうな顔はしない。

だからと言って、喜んでいるわけでもない感じ。


言われたように先に風呂場に行って、湯ぶねにつかっていると、すぐに柚希は来た。


俺は、立ち上がり、柚希を抱きしめてキスをした。

そして、耳たぶを舌先で転がし、首すじをすべらせた。


「とおる、ちょっとシャワーくらい浴びさせてよ。

今日、汗だくだったから」


「そっか、ごめん、ごめん」 


柚希の裸を見るのは、別に珍しいことではない。

前より回数は減っているけど、夜の営みはしているし。

だけど、それって、寝室のベッドの上で、暗いところで抱き合っているから、こうやって明るいところでまじまじと見るのは久しぶりだな。


柚希は、肌の色が白い。

この白さは、なんてゆうのか、陶器みたいな白さだ。

その白い身体に小ぶりな胸。

陶器の皿に盛られた牛乳プリンみたいにプルンとしていてかぶりつきたくなる。


シャワーを浴びると、湯ぶねに入ってきた。

対面ではなく、俺の股の間に体育座りで背中を向けて、つかった。

俺は、覆いかぶさるように抱きしめた。





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