第93話 嘘をついている

 これで、ひとつ はっきりとわかった。


柚希は、嘘をついている。



矢沢弘人が言っていた。


中2の時に、矢沢が柚希に告白して、最初に言われたって。

‘’田坂のことが好きだけど、片思いで、つらいんだ‘’ って。

で、‘’朋徳のことは、忘れさせてやる!!‘’って、かっこつけてそう言った、と。

で、結果、忘れさせることはできなかった、と。



田坂朋徳も言っていた。


‘’中野が中学1年の時に私を好きだったと、高2か、高3か、その頃にひろから聞きましたが。

その時、もうすでに過去形のはなしでしたよ‘’ と。



こっちのネタは上がっている。

柚希以外の当事者2人が、柚希が田坂を好きだったと認識している。


そのことを隠して嘘をつくのは、それを触れられたくないから。

それを触れられたくないのは、それが過去形の話として終わってないから。



もう全部知ってるから、隠さなくていいよ。

田坂のことを好きだったんだよね?

誰よりも?

いろんな人とつきあっても、ずっと田坂のことが好きだったんでしょ?

今も、忘れられないんだよね?

俺と結婚したこと後悔してる?

別れて、田坂と結婚したいとか思ってた?

でも、子どもたちがいるから別れられなかったのかな?

でも田坂も結婚してしまったよ。

それで、どうしたいと思ってるの?

田坂は、現世で柚希に手を出すつもりはないんだってさ。

で?

柚希は、どうしたいの?

田坂の結婚式に出て、なにかしら、気持ちを納得させられたの?

あきらめられる?

今度は本当に忘れられる?



問いただしたい。

めちゃめちゃ、いろいろと、気になるし、気にいらない。

だけど、それは、精神的な支配になってしまうのか?

つい一昨日、反省したばかりだってゆうのに……



初恋の人は、田坂なのか?って聞いて、

うん、そうだよって言われていたら、俺の気持ちは晴ばれとしたのか?

柚希の口からそれを聞いたら、やっぱり落ちこんだかもしれないな……



優しさの嘘、なのか?

俺を傷つけない為の?



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る