第56話 佐古高校の部長

 佐古高校とは何度か練習試合をしたけれど、

俺らが高1の時の練習試合だというのなら、あの時のか?

それが何?


「2日続けて佐古が来たんだよ。

1日目が男子で、2日目が女子。

でさ、その2日とも来てた人、覚えてる?

部長さん」


「田坂……だよな?」


「そう、その人」


その人?

ん?

その人??


「中野先輩って、人見知りなのにさ、中野先輩から声を掛けてたんだよ!

めずらしい!!って思って見てたの」


「あ、中学一緒で、同級生で、剣道部も一緒だったし、って聞いてるけどな」


「そうなんだってね!

うちらも、後で聞いて、そうなんだ~って思ったけどさ、男子と、あんなに笑って楽しそうに話してる中野先輩 初めて見たよ」


「確かにな!俺もそう思って見てたよ!

なんだよ!あいつ!!ムカつくな!!って思ってた」


「そうそう!!倉田、超ジェラってるわ~って、りんちゃんと ヒソヒソ話してたよ」


ジェラってる?

ジェラシー?嫉妬してるってこと?

ってか、当時から、俺が中野先輩を好きなのバレてたってことか?


「でさ、先生に部室から拍子木取ってこいって言われて、わたし、道場を出ようとしたらさ、

入り口にいたんだよ!矢沢先輩!!」


「えっ?」


「めっちゃ!!にらんでたの!!

マジで、めっちゃ、にらんでた。

でさ、中野先輩に用があるんだと思ったからさ、ちょっと怖かったけど、中野先輩呼んで来ますか?

って聞いてみたの!!

そしたら、いいよ、って言って 行っちゃった。

倉田がにらんでたのの、100倍怖い顔でにらんでたからね!!

矢沢先輩のあんな怖い顔、はじめて見たよ!

怖い顔だったけど、イケメンは、イケメンだったけどね。

で、振り返って中野先輩を見たら、あははっ!

って、矢沢先輩に気がつかないで笑ってたの。

で、あ、わたしが見たのはそこまでね!

でっさ、うちのクラスの舞美ちゃん覚えてる?

バスケ部のマネージャーだったんだけど、その数日後に話してたら、この間、矢沢先輩がめちゃ

機嫌悪い時あって~、先生に怒られて、グランド走ってこいって言われて、出てって、戻ってきたら、なんか泥だらけでさ~。

転んだのか、何したのか、顔にまで泥ついてるし、血がにじんでるし。

消毒しましょうか?って聞いたら、怒鳴られた!って!

矢沢先輩がそんなイラついてるの初めて見たよ!って言ってて。

なんか、繋がったって思ったの。

矢沢先輩は、中野先輩が、田坂って人に、気があるんじゃないかって思っていて、でも、それを中野先輩に問いただすことが出来なくて、イラついてたんじゃないかって。

って、言ってもさ、その後も、中野先輩と矢沢先輩は普通にラブラブカップルだったから、結局

ただのヤキモチだったのかな?って思ってたんだ」


ただのヤキモチ……


あの時、矢沢弘人が見ていたのか……

矢沢弘人なら、俺の時みたいに、ゆき!!って、デカい声で呼んで邪魔するとか出来そうなのに。

それが出来なかったのは……

ゆきが笑っていたからか?

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