第48話 どうゆう意味だよ

 バツイチ再婚の矢沢弘人は、柚希に対して、未練のようなものはなくて、昔の恋人に対する情があるだけだと思った。

もう、とっくに終わったこと、と。

今は、柚希が幸せでいて欲しいと、心から思ってくれている。

そう感じた。

俺が、須藤桂吾を応援したいって思うのと同じように、矢沢弘人は俺のことを応援してくれてるのだなと思った。


その矢沢弘人が口にした言葉。


‘’ゆきの心の奥にいたのは、いつだって、俺じゃなかった……‘’


あんなに、ラブラブでつきあっていたのに、どうしてそんな風に思っていたんだ?


ってか……

ってゆうか、これ、まさしく、俺が思っていることと同じなんじゃないのか?

俺は、柚希は、矢沢弘人のことを、今でも忘れられないでいるんだと思ってた。

違うのか?

 

俺のことを愛してくれてるのは、わかってる。


だけど、もっともっともっと心の奥で、誰かを想っている。

そんな気がしてならない。



‘’剣道をやってる奴には勝てないと思っていた‘’


‘’キミも剣道部だろ?

そのキミでもダメなら、きっとダメだろ‘’


って、どうゆう意味だよ?


‘’ゆきを失いたくはないだろ?‘’


って、どうゆう意味だよ?



 家に帰って来たのは、12時近かった。

だいぶ飲んでしまった。

酔っぱらってるついでに、矢沢弘人と飲んできたよ!!

とか、言いたくなった。

ま、それは言わない方がいいのだろう。


玄関ドアを開けて家に入ると、その音を聞いてか、柚希が寝室から出てきた。


「おかえり。お疲れさま」


「ただいま。起こしちゃった?」


「ううん、本 読んでたから」


柚希は、読書家だ。

よく分厚い本を読んでいる。

なんの本?って聞いたら、哲学だって。

俺は活字嫌い。

漫画本なら読むけど、分厚い本はきっと1ページで寝落ちしてしまうだろう。

柚希は、高校時代も成績が良かったけど、こうして本をよく読んでいるところも、昔と変わらずに勉強熱心なんだな。


「珍しく、だいぶ酔っ払ってるね。

千鳥足じゃん!

これでよく帰ってこれたね~」

 

ほんとだ。

演技でもなく、ふらついている。

だいぶ、酔っ払ってるな……

酔っ払いついでに、柚希に抱きついた。


「ゆき、俺のこと好き?」


「あははっ!珍しいこと言ってるね~。

とおるのこと、大好きだよ」


と、柚希は笑って言った。


「俺のどうゆうところが好き?」


「え~~!!どうゆうところって。

優しいところも、おもしろいところも、顔も体も全部好きだよ~」


顔も体も?


股間がムクムクとしてきた。


「ゆき、抱きたい」


「うん」



柚希は、俺の誘いを拒むことはない。


俺の誘いを?


誰の誘いも?


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