第43話 バカらしい

 何だか本当にバカらしいと思った。

俺は何をしてるんだ?

何を探しているんだ?

妄想の誰かに嫉妬して、俺に尽くしてくれている妻のことを疑って調べて。

元カレ達に会って、話を聞いて。

そんなことを柚希が知ったら、本気で呆れられるだろう。


須藤桂吾の話をするのは、俺に気を遣って今まで話題にも出せずにいたのだろう。

長野のライブのことがあってから、普通にRealの話もするようになった。

柚希の推しは、Shunさん。

うちの息子と同じ名前。

俺がつけた名前だから、Shunさんを意識してつけたわけじゃないし、偶然だけど。

ピアノとギターを担当している。

あと、編曲?

アレンジャー的な人。

ロックバンドとして尖っている印象のRealの中で、Shunさんは、ただ一人 真面目系のキャラ。

Realの5人は、長野出身で、進学校として地元で有名な陵北高校を出ている。

あの陵北を出て、ロックバンド?って、そこから型破りな感じがするけど。

Shunさんは、学年で3番以内の優秀さだったと。

これは、テレビの情報番組を柚希と一緒に観ていて知ったことだ。

すごいね~!!陵北で3位内って!!

ピアノもめちゃ上手くて、才能ヤバいね!!

って、柚希は言った。

才能ヤバいのは、須藤桂吾もだろ?

って俺が言うと、

そうだよね!!桂吾あんな感じなのに、いろいろとすごいんだよね~!!

すごい感じに見えないところが、また、すごいよね!!

と、あははっと笑った。


なんてゆうのか、同級生の男の子の話をしているような感じ。

彼氏だなんて思ったことはなかった、という昔の男。


俺も同じ女にホレた者として、須藤桂吾のことは応援していきたいと思っている。



大好きな妻に、愛想を尽かされないように、嫉妬するのも ほどほどにしなくては、と思う。




 そんな風に考えて平穏に過ごしていた1年後、

あいつから俺のスマホに電話が掛かってきた。

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