第38話 Realのライブ

 Realのライブ……

ライブが終わったら、柚希は須藤桂吾と話をするのだろうか?

普段、Realの曲も全然聴いていない柚希が、初めて直接Realの曲を耳にしたら……

須藤桂吾の想いに気づくだろう。

いや、もうそれは、わかっているのか。

わかっていて行くっていうのは、それは つまり……


酒を飲んで帰ろうなんて気分ではなくなった。

コンビニで弁当だけ買って家に帰った。


今、9時15分

6時30分開演だってことは、一般的なライブでは終わっている時間かな?

スマホを手に取り、SNSを見ると、Realの今日のライブのことがいっぱいあがっていた。


‘’余韻の人‘’ が来たのでは?

って、盛り上がっている。

今日の長野のライブは、サプライズナイトだったのだと。

サプライズナイトというのは、Realのライブツアー中に1回だけやるもので、いつもはMCをkeigoがやっているけど、サプライズナイトではDAIKIとU−yaがMCをやる。

それと、RealはギターがkeigoとShunの2人だが、どちらかというとShunはピアノを弾いている曲が多い。

サプライズナイトでは、普段のShunのパートとkeigoのパートを交代してやるのだと。

つまり、普段のライブではあまりkeigoがピアノを弾くことがないけど、今日のサプライズナイトではkeigoが、あの超難しいとされる

『YO・I・N』のピアノ演奏をしたのだと。


そして、『YO・I・N』のあと、続けてピアノの弾きがたりをkeigoがしたのだと。


Realがデビューして10年。

ライブのステージで、keigoが弾きがたりするのは初めてのことだと。

しかも、それは未発表曲だったらしい。

その弾きがたりの衝撃をファンたちはこぞってSNSにあげている。


『keigo!!ピアノソロからの、まさかの弾きがたり!!この現場に立ち合えて幸せ!!』


『keigoサイコ~すぎるって!!

余韻の人に対してのラブレターって♡』


『神回だった!!全公演Realと共に廻ってきたけど、今日の長野は神回すぎた!!』


『弾きがたり!!しかも、即興???

スタッフさんもメンバーもバタついてたな』


『これ!マジで円盤化 希望です!!』



keigoがピアノの弾きがたりで歌ったという曲を、耳コピしました!と、何人もアップしていた。

さすがに、全て聴き取って覚えて帰ってくるのは無理だっただろうけど、何人かの耳コピを継ぎ足すと、だいたいの歌詞はわかった。




LOVE LETTER  

あの頃 伝えられなかった想いを書くよ

キミとは同い年だったけど 

オレの方がずっと大人のつもりでいたんだ

たったの1年半

だけど

いつの間にか優位に立っていたのはキミだった

オレから離れて行かないでって願ったけど

キミはオレのもとから去って行った

オレに残されたのは

たった1年半の思い出だけ

荒れてみたり 腐ってみたり 逃げ出してみたり

結局 元の場所に戻ってきた

キミの曲を作って

10年経ったよ

キミのお陰だと思ってる

キミに出会えてなかったら

オレはいつまでもフラフラしたヤツだったろう

キミのことを想うと

純粋で 穏やかで 清らかな気持ちになれるんだ

元々オレは

自信家で 傲慢で いい加減なヤツだった

そんなオレをキミが変えてくれたんだ

たったの1年半

だけど

たぶん

これ 一生忘れることないよ

LOVE LETTERなんて 書いたことないから

どうやって書くのかも よくわかんないし

だけど

渡すこともできないから

すげー ズルいんだけど 歌にしちゃう

あの頃 ちゃんと伝えられなかったけど

本気で

本気で 好きだった

たった一度の恋だった

今ならそう思えるよ

キミに伝えたい言葉は

心から ありがとう




これは、本当にラブレターだな。

これを受け取った柚希は、どうしたんだ?




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