第37話 春休み
ここ数年、峻の春休みに、柚希は子どもたちを連れて実家に帰省している。
3日から5日間くらい。
お盆休みや、年末年始に俺の実家へ帰省するけど、その時には柚希の方の実家へはちょっと顔を出すくらいで泊まったりはしない。
俺は柚希に、実家へ泊まってきてもいいよ?って言ったけど、柚希は いいよ と、言った。
長男の嫁的に、俺や義父母に気を遣っているのだろう。
だから、春休みくらいは、俺にも気を遣わずに、実家でゆっくりゆったりくつろいできてくれと思っている。
とはいえ、柚希がいないと寂しくてついつい電話を掛けてしまうのだけど。
今回は、3/26から3/30まで行ってくるねと言われて、東京駅まで柚希と子どもたちを送って行った。
27日の夜
今日は仕事が8時あがりだった。
急いで帰る必要もないし、飲んで帰ろうかなって思って、その前に柚希に電話をかけてみた。
『この電話は電波の届かないところにあるか、電源が入っていない為かかりません』
ん?
電源切ってるのか?
あれっ?
充電器持っていかなくて、充電切れとか?
そう思って、柚希の実家に電話を掛けることにした。
まだ8時半だから、ご迷惑な時間じゃないよな?
「はい、中野です」
お義母さんが出た。
「あ、お義母さん、亨です。
子どもたちが、ご厄介になってます」
「あら、亨くん。ご厄介だなんて、峻も奏もおりこうさんにしてるわよ~。代わる?」
「あ、いえ、柚希さんのスマホが通じなかったので、柚希さんに代わってもらえますか?」
俺がそう言うと、
「柚希、今コンサートに行ってるの。
夕方出てったけど。
もうそろそろ帰ってくる頃かしらね~」
えっ?
コンサート?
「1人でですか?」
「お友達と行くって言ってたけど」
お友達?
「なんのコンサートですか?」
「さぁ、いちいち聞かなかったけど。
いけなかったかしら?」
「あ、いえ、すみません、子どもたちの世話をお願いしてしまって」
「全然いいわよ~。普段なかなかコンサートなんて行けないからね。
こっちにいる時くらいは、好きなことさせてあげたいじゃない?」
柚希は、独身時代はクラッシックのコンサートによく行っていた。
結婚してからは、俺がクラッシックに興味がないからか、一緒にコンサートへ行こうとは言われていない。
1人で行くこともなかった。
家で、クラッシックのCDを聴くくらいで。
お義母さんに、‘’こっちにいる時くらいは、好きなことさせてあげたいじゃない?‘’ って言われて、なんかドキッとした。
俺は、柚希の好きなことを、なにもさせてあげてないのかな?
パパから電話だよ~、って、電話の向こうで声がして、峻が電話口に出た。
「パパ!お仕事終わったの?」
「うん、今終わって帰るところだよ」
「ご飯食べた?」
「まだ、これから食べるところだよ。
峻は、食べたの?」
「うん、食べたよ~。ばあばが作ったカレーにね~、とうもろこしがいっぱい入ってたの!!
ママのカレーとは違う味だったけど、おいしかったよ!!」
とうもろこし!!とうもろこし!!と、後ろで奏が騒いでいる。
「そっか、よかったね。
じゃ、ママ帰って来る前に、歯を磨いたりするんだよ」
「うん、わかってるよ~!!
じゃぁ、パパ!バイバイ!!」
「うん、バイバイ!!また、明日ね」
電話を切ってから、今日長野でやっているコンサートを検索してみた。
1番上に出てきたのは
3/27 Real 会場 ビッグハット 18:30~
Real …………
Realのライブに行ったのか?
チケットをとって?
それとも、招待されたのか?
俺に内緒で?
須藤桂吾に会いに行ったのか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます