第34話 ボクやだよ

 息子は2人とも、柚希に似ている。

顔が。

お母さんにそっくりね!!と、いつも言われる。

俺には似てないのかな?

でも、性格ってゆうか、ママが大好きってところは、俺に似ているってことか。

長男の峻は、今 小学1年生。

体操教室と、スイミングに通っている。

今どきの習いごとって感じかな。

これは、柚希が決めてきた。

通っていた幼稚園でチラシが配られて、体験だか、見学だかに行ってくるね、と、峻と行った。

峻がやってみたいって!!って、柚希もやらせたい感じだったから、いいんじゃないって、俺も了承した。


俺的には、やっぱり剣道をやらせたかった。

だけど、ちょっと調べただけだけど、今のマンションの近くに子どもの剣道クラブみたいなものはなさそうだった。

まぁ男の子だし、なにかしら体を動かす運動系をしてほしかったから、それは剣道にこだわらなくてもいいかとも思った。

峻がやりたいと言って、柚希も乗り気だったから、俺が反対することではないだろう。


峻は、どちらかというと、おっとりしていてマイペース。

優しい性格だから、そもそも ‘’戦う系‘’ は、むいてないのかもしれない。

体操もスイミングも、人と戦うってよりも、自分との戦いみたいなものだ。

体操の出来栄え然り、水泳のタイム然り。

柚希も、峻が戦い系ではないと思っているのだろう。


峻が幼稚園の頃に、1度親父の剣友会へ連れて行ったことがある。

何かの長い休みの時で、長野へ帰っていた時だった。

剣道やってみる?

と、峻に聞いてみた。

「ボクやだよ」

と、小さな声で言った。

そうか、イヤか……

剣道かっこよくない?

パパとママが出会ったのは、剣道がきっかけなんだよ!

ママは昔、剣道がすごく上手な人だったんだよ!

とか、言いたくなった。

けど、そんな馴れ初めを幼稚園児の息子にしてもしょうがないよな。

本人がイヤだって言ってるんだから、無理強いするのはやめておこう。

家に戻ると、柚希は奏を抱っこしながら俺に、

どうだった?と、聞いた。


「ボク やだよ、だってさ」

と、俺が言うと、柚希はクスッと笑って、

「はっきり言ったね」

と、言った。


峻がそう言うとわかっていたような感じだった。

柚希は、峻に剣道をやらせたくないんだな、と思った。

別に、それでどうこうモメる話ではない。

俺は、親父とは違う。

絶対に剣道をやれ!とは思わない。

それぞれの自主性を重んじたいと思っている。


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