第23話 抱きしめたい

 せっかく六本木まで行ったから、前にテレビで観て柚希がおいしそう!と、言っていた 麻布の

いちご大福のお店に行った。

なんとなくだけど、女子の方がスイーツって好きなのかな?って思ってたけど、柚希よりも俺の方がスイーツ好きだ。

ケーキだったら3個くらいはペロッと食べれる。

子どもたちも、ケーキは大好き。

柚希は、1個で充分と言う。

そんな柚希が、いちご大福は大好きだと言っていた。

だから、テレビで紹介されていた店に1時間並んで、いちご大福を10個購入した。


家に帰って柚希に渡した。


「え~~!!これって、あれ?」

 

「うん、今日の研修、麻布の近くだったから」


今日は、非番だったけど、座学の研修ということになっている。


「すごい行列だったんじゃないの?」


「うん、1時間列んだよ」


「研修でお疲れなのに、ありがとうね」


いや、研修じゃなかったし、柚希の笑顔を見るとマジでうれしくなる。

抱きしめたい!!

だけど、すでに奏を抱っこしている状態だったから、抱きしめることはできなかった。



今日、須藤桂吾に、彼女のはじめてを手に入れているから、忘れられないんだと思いますって言ったけど、じゃ、俺は何を手に入れたのだろう。


結婚しているのだから、俺の妻になってくれたってことは、彼女のすべてを手に入れたってことだとは思う……

他の誰かとじゃなくて、俺と結婚してくれたのはどうしてだろう。

俺のことを愛してくれてるから、と、思いたい。

だけど、つきあい始めてすぐに柚希の実家へ行って ご両親にご挨拶したり、俺の家族に紹介したり、柚希が結婚を断れないように、強引に話を進めたからだ、とも思う。


俺のことを好きだと、愛していると言ってくれた。

この8年だって、俺と子どもたちを献身的に支えてくれている。

だから、柚希が俺を愛しているって、素直に信じていればいいじゃないか!!


なのに、俺は、ずっとずっと 誰かに嫉妬している。

妻のことが好きで好きで仕方ないんだ。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る