第22話 須藤桂吾 5

 Realは5人組のロックバンド。

イケメンの2人が女子の人気を牽引しているけど、バンドとしての実力がかなり高い。

男から見ても、憧れる存在だし、純粋にロックが好きな男子からRealは絶大に支持されている。


須藤桂吾に言われたように、スタッフさんが来るのを待っていた。


数分後、さっきの受け付けの女性が、にこやかに部屋に入ってきた。


「じゃ~ん!!keigoさんからのプレゼントですよ~!」

と、言いながら、俺に紙袋を渡してくれた。

そこに入っていたのは、3枚の色紙。


えーーーーーーーーっ!!

マジか!!


俺が大好きだと言ったoneの4人のサイン。

それと、倉田亨様と名入りのサインが2枚。

どちらかが須藤桂吾で、どちらかが桜井龍聖なのだろう。


いや、マジか…………

これ、こんなん貰ってもいいのか?

警察官としては、これは、なんてゆうのか……

なんらかの利益供与にあたるんじゃないか?

前に、フリマサイトでoneのサインを検索したことがあった。

確か、20年前の来日公演の時のサインで、

100万円近かったと思う。


「これ、すっごい価値あるみたいですけど、転売しないでくださいね~!

あ、警察官だから、大丈夫か?」

と、笑った。


いや、売らねーけどさ。




 まさか今日、須藤桂吾に会えるとは思っていなかったから、会えて話が出来て良かった。

須藤桂吾は、超かっこいい男だった。

10年前に会った時と変わらず、ミュージシャンとして売れているのにきどってなくて、明るくて社交的で、コミュ力が高い人だな。


柚希のことは、ずっと好きなんだろうけど、どうにかして俺から奪い取りたい、みたいな好戦的な感じはまったくなかった。

言われた訳じゃないけど、彼女のことをよろしくね!って感じた。


oneのサインは、oneと須藤桂吾の関係性からしたら、もしかしたら何枚か持っているのかもしれないけど、それにしたって、突然押し掛けてきた俺にあげる必要はないのに。


なんてゆうのか、ハーフだけど、気っ風がいい。

優しくて、いかした男なんだな。

女も男も関係なく、トリコにする。

サインをもらったから、とかじゃなく、良い意味で、人たらしなんだろう。


そんな須藤桂吾に愛されていたのに、なぜ柚希の心は落ちなかったのか。


それは、やっばり……矢沢弘人を忘れられなかったからなんじゃないのか?

そうじゃなきゃ、自分をけがれているなんて言い方しないだろう。

矢沢弘人を忘れられないのに、忘れる為に抱かれている自分を、けがれていると思っていたんだろう……



須藤桂吾に会えたことで、なんだか俺は、俄然 他の男にも会いたくなった。

柚希が俺との結婚前につきあっていた男たち。

どんな男か、会って話してみたくなった。

その時、どんな風に柚希のことを思っていたのか。

どんなところが好きだったのか。 

どんな、付き合いだったのか。

今、柚希のことを どんな風に思っているのか。

無性に知りたくなった。


次の休みに長野へ行こう。


友達の長野県警の松林に連絡を取った。

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