第8話 初 道場

 3年生の先輩たちの大会が終わった。

今年は、あまり良い戦績ではなかった。

あれだけキツい稽古をしているのに、男子は3位、女子は5位だった。

3年の先輩たちが引退されて、俺たち1年生も道場で防具をつけて剣道することが許された。


上手かみて下手しもてで一列に並ぶ。

これは男女一緒に並ぶ。

上手かみてには、2年の先輩たち。


まずは、切り返し。

下手しもてから始める。

下手しもてが終わると、上手かみてが切り返しをする。

そのペアが終わったら、お互いに右へ一歩ずれる。

で、違う相手と同じように、切り返し。

これを、5本。

切り返しは、剣道の基本中の基本だ。

これを疎かにしてはいけない。

5人目で、中野先輩の前にきた。

これは、マジで緊張する。

緊張はするが、ちょっと上手いところを見せたい気持ちもあって、デカい声で気合いをだした。


よし!!うまくできた!!


で、次は先輩の切り返しを受ける方。


早い!!

左右面の位置も正確!!

この早さで?

体当たりも強い。

いつも、松井田先輩とやっているだけあるな。

見てるのと、受けるのとでは体感的に全然違う。

早くて正確な打ち。

すごい!!

横を抜けるスピードも超はえー!!

えっ!!マジ、すげー!!


礼をして、右にずれた。


その後は、男子女子分かれての練習になる。

奥の方で男子、手前で女子がさっきのように並ぶ。

面打ち5本、小手5本、胴5本。

小手面、小手胴、小手面胴などの、二段技、三段技の練習。


ちょうど中野先輩が隣りにきた時、小手面胴をした。

すごく早かった。

女子でこのスピードで打てる人なかなかいないだろう。

一陣の風が吹いたようだった。

これ、受ける方のさばき方がもっと上手ければ、中野先輩もっと早く抜けれるんじゃないか?



基本的な打ちの練習のあと、今度は2年生と経験者の1年生で試合形式の稽古をした。

初心者は、一列に正座しての見学。

見取り稽古とも言うが、これも大事な稽古だ。

部長の村木先輩が名前を呼んだ人が立ち上がり、試合稽古をする。

何人目かで、俺の名前が呼ばれた。

対戦相手は、松井田先輩。

対してみると、デカい!!

圧がすごい!!

デカいし、早いし、当たりが強い。

これ、まともにくらったら、アザできんぞ!って小手がきた。

竹刀で払ったけど、重い!!

そのまま体当たりされて、倒れたところを面を

一本とられた。

こうゆうパワー系の人とやった経験があまりなかったから、これは勉強になる。


部活が終わってから、中野先輩が俺に声を掛けてくれた。


「倉田くん!目がいいね!!

松井田の小手見えてたんだ!」


えっ?


「あれ、初見でよけられる人いないよ」


「あ、ありがとうございます」


にこっと笑って、ポニーテールをひるがえした。


わっ!!

褒められたんだよな?

うれしーー!!

マジ、がんばる!!





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