第11話 優秀賞
梅原高校は、普通科と商業科の2つの科がある公立の高校だ。
創立100周年も近い歴史ある伝統校。
でも、偏差値的にはあまり高くないので、進学校という感じではない。
俺は、ここで剣道をやりたかったから梅原を選んだけど、中野先輩は、矢沢弘人が梅原にすると言ったから、梅原にしたのだと。
なんだよそれ!と思った。
中野先輩は、商業科。
商業科の高校なら、この辺りでは山嶺商業高校が有名だ。
偏差値も高く、大学への進学率も高い。
商業科らしく、就職する人も多いけど、高卒にしては、割りと名のしれた企業への就職もできる。
中野先輩は、山嶺を目指していたらしい。
ちなみに、山嶺も女子の剣道は強豪校だ。
中野先輩は、矢沢弘人の頭のレベルに合わせて、志望校を下げたんだな。
志望校のレベルを下げたとしても、商業科の科目は、簿記とか珠算とかの検定試験もしょっちゅうあってなかなか大変らしい。
同じクラスの村木先輩によると、中野先輩は常にクラス1位だそうだ。
8教科の中間テストで792点という恐ろしい点数だったと。
学年でもトップか、悪くても2位なのだと。
部活も、あれだけやっていて、朝練までしてて いつ勉強してるんだろう?と思う。
自分に厳しく律することができる人なんだな。
3学期の終業式に、優秀賞の表彰というのがあった。
各学年ごとに、普通科と商業科の1人ずつ、表彰されるのだ。
これは、部活をやっていること、成績が良いこと、それに加えて商業科は検定試験の合格も考慮されて選ばれるのだそうだ。
2年生の商業科の優秀賞は、中野先輩だった。
去年もそうだったのだと。
ステージに呼ばれ、賞状と図書費と言う名の、金一封を貰っていた。
中野先輩は、彼氏がいても、部活も勉強も手を抜かない。
そんなところを、ますます好きになっていた。
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