第5話 華道部
中野先輩をどうして好きになったのかと考えてみる。
中野先輩は、普通の人だ。
ぱっと見で 心を奪われるような容姿ではない。
いや、ブスだと言ってるのではない。
顔のランクで言えば、中の中か、中の上か?
特徴的と言えば、“”目“” かな?
切れ長の目で、黒目が大きく見える。
まつ毛が長くて、量も多いのか、まばたきをするとバサッバサッ!と鳥が羽ばたくような感じ。
それは、大げさな表現だけど。
たぶん、一目惚れしたのは、この目にやられたんだと思う。
なんてゆうのか、不思議なんだけど、まばたきした瞬間に吸い込まれた。
心が。
中野先輩は、人見知りだし、男子が苦手で、あんまり話せない、クラスの男子と話したことない、と言う。
は?嘘だろ?と、思う。
だって、部活中、普通に男子と喋っているし、1年生の男子にだって、ちゃんと指導してくれてるし。
初心者の男子になんて、竹刀の上から手を握って、持ち方を教えている。
俺も、初心者のフリをすれば良かったと思ったくらい。
でも、同じクラスの村木先輩いわく、中野はクラスでは、地味でおとなしくて、目立たない。
まったく男子と接することはない。
たぶん、中野が男子と話をするのは、剣道の話だけだろう、と。
そうなのか?
入部して1ヶ月くらいして知ったけど、中野先輩は、華道部と剣道部のかけもちだそうだ。
梅原の剣道部は練習も厳しいだろうに、かけもちなんてアリなんだ?
何でも、華道部に最初に入って、入ってみたら、活動が週1だけだったと。
それで、それ以外の曜日ということで、剣道部に入ったそうだ。
まず、華道部を第1希望で入ってたことに驚いた。
中野先輩は、剣道大好き!って気がしていたから。
毎週水曜日が華道部の活動日だったけど、華道をやり終わってから、ちょっと遅れて、剣道場に来ていた。
それで、俺たち1年の指導をしてくれた。
かけもちなんて大変そうだけど、中野先輩は花がすごく好きなんだよね~と笑う。
今日華道で使ったお花って、花束みたいにして持ち帰ってきて、女子たちは
「わぁ!!キレイ!!」
って、群がる。
「これ、なんて花ですか?」
って、こいつも花が好きなのか、城田が聞いた。
「これはアネモネ、これはガーベラ、アルストロメリア、ストック、スイートピー」
「えっ?これ、アネモネなんですか?」
「あっ!城田さんも好きな人?わかるんだね?
普通のアネモネは、一重が多いけど、これは八重なの!
ラナンキュラスっぽいよね?」
「あ!本当ですね~!全部春らしくて飾るのいいですね~」
「そうだよね~!!ウキウキしちゃう」
先輩が剣道以外の話をしているのを初めて聞いた。
そっか、花が好きなんだ。
そう言や、うちの母さんも、わりと好きか。
女の人は、好きなのかな?
興味のない人間からすると、“花” ってゆう大きなカテゴリーでしか分類できない。
さっき先輩がスラスラと答えた花の名前は、どれもこれも聞いたことがない単語だった。
かろうじて、……スイートピー?
それが、どんな花かはわからないけど……
先輩の誕生日っていつだろう?
花をプレゼントしたら、きっと喜んでくれるだろうな。
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