第16話 再会で告白

 中野先輩との再会は、俺が警察官として社会人1年目の7月。

中野先輩の誕生日の前日に、先輩が働いている会社まで押しかけて行った。


会社の受け付けで名前を名乗り、中野柚希さんを呼んでもらった。

ってか、中野柚希さんって呼んだのも初めてで、緊張して噛みそうになった。


数分後、

「倉田くん?」

と、後ろから声をかけられた。

昔と変わらない声。

振り返ると、昔より大人っぽい表情の先輩が立っていた。


「あっ、中野先輩!お久しぶりです!

お忙しいところ、すみません!」


「ほんと、久しぶり!私ここにいるの、よくわかったね!なんの用?」

そう言うと、ちょっと首を傾げた。


「あっ、はい!

これ、どうぞ!!受け取って下さい!」


俺はそう言って、手に持っていた大きな紙袋の中から、真っ赤なバラの花束を差し出した。


「えっ!!なに?私に?」

 

「中野先輩!結婚を前提に、僕とお付き合いしてください!!」


よし!!

言ったぞ!!

噛まずに言えたぞ!!


先輩は、ポカンとした顔をして、固まっていた。

そりゃ、そうか。

何年も会ったこともない高校時代の後輩が、突然に会社まで押しかけて来て、プロポーズ的な告白をしてんだからな。

先輩からすれば、状況がのみこめないだろう。


「なに?倉田くん、なんの冗談?」


「冗談なんかじゃありません!

高校の頃からずっと、あなたに憧れていました!自分もやっと社会人になることができたので、中野先輩に交際を申し込みに来ました!!」


なんか、勢いよくデカい声で言っちゃった!

先輩の顔が、耳まで赤くなってる。

それを見て、俺も赤面した。


でも続けて、

「明日、先輩の誕生日ですが、僕にお時間いただけないでしょうか?」

まっすぐに先輩の目を見て言った。


「あの……ここじゃ、話も詳しく聞けないし……どうしてこうゆうことになってんだか、全然ピンとこないんだけど……

じゃ、明日、会社5時半には出れるから、この目の前のビルの5階のバロンって喫茶店で待ち合わせでいいかな?」

と、先輩は小さな声で、そう言った。


「はい!ありがとうございます!

どうぞ!受け取って下さい!」

そう言って、もう1度 花束を差し出した。


「ありがとう」


「それでは、明日、お待ちしています!失礼しました!!」


そう言って、先輩の会社を出た。

外に出た途端に、熱風にクラクラした。

気合いを入れて着てきただけの、着慣れないスーツのジャケットを脱いで、ネクタイを緩め近くのコンビニに駆け込んだ。

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