第398話 艦隊戦と精霊雲
オーク帝国の件が片付いたので、我々は惑星改造に集中できるようになった。そんな時、ナインリングワールドから連絡が来た。それは鬼人連盟とブラッド同盟の艦隊戦が始まりそうだという連絡だった。
「レギナ、艦隊戦はどちらが勝つと思う?」
イズモのブリッジで質問すると、レギナが首を傾げた。
「戦力的には互角だと思うわ。ただ鬼人連盟の方が人口が多いから、それがどう影響するかね」
取り敢えず、デルトコロニーに戻る事にした。
「マスター、戦争見物でもするの?」
「戦争見物という訳じゃないが、その戦いの結果でナインリングワールドが変わると思うんだ」
ブラッド同盟が勝利した場合、それほど変化はないと思う。だが、鬼人連盟が勝利した場合、他のコロニーの運営にまで口を出しそうな勢いがある。
「ワーキャット族が小惑星の採掘事業を始めようとした時、ワーラビット族に許可を出さないように迫ったそうよ」
鬼人連盟はワーラビット族を
宙域同盟や天神族の恐ろしさが分かったのなら、大人しくなれば良いのに。鬼人族のメンタルは理解できない。
メルカルナ星系からナインリングワールドへ向かった。私はイズモのブリッジで考えていた。
「サリオ、ナインリングワールドは大きな市場だけど、鬼人族が勝ったら自由に商売ができなくなるかもしれない。どうしたらいいと思う?」
「そうでしゅね。鬼人族が勝ったら、デルトコロニーの住人をゾロフィシュに移しゅ事を考えた方がいいかもしれないでしゅ」
レギナにも聞いた。すると、ナインリングワールドからの完全な撤退は反対だが、商売や防衛に必要な人員を除き、ゾロフィスに移住する事を考えた方が良いという意見だった。
ナインリングワールドにあるデルトコロニーの資産は、デルトコロニーと農業コロニー、都市宇宙船、それにデルトコロニーが惑星ツカールに建設した採掘施設とスペースコロニーになる。
新しいスペースコロニーは数年前から建設を開始していたのだが、戦争に巻き込まれたり、我々がナインリングワールドを離れたので、完成が遅れていたものだ。
建設したのは惑星ツカールの衛星軌道で、月のように惑星ツカールの周囲を回っている。そこでは採掘事業に関わる大勢の人々が生活していた。
それらを含めたデルトコロニーの全人口は、五十万人ほどになっている。その他に友好的な種族としてリス人間のワースクワール族や山羊人間のサテュロス族も居る。それらの人口も含めると百万人を超える。それでも小国である。
「ゼン、ゾロフィシュに移住しゅるのなら、クーシー族も移住していいでしゅか?」
「いいけど。故郷の惑星ジルタで復興事業をしているのではないのか?」
「ジルタの状況が良くないそうでしゅ。周りに商売ができる星系も少ないので、苦労しているようでしゅ」
ナインリングワールドのデルトコロニーに到着した。すぐにロードパレスへ行くと、もう少しで艦隊戦が始まるというところだった。
鬼人連盟の戦力は、戦艦六隻、巡洋艦九隻、駆逐艦三十六隻という大規模なものだった。一つの星系が保有するには大きすぎる戦力だ。しかも、それと同等の戦力をブラッド同盟も用意していた。
デルトコロニーからはステルス偵察艦を出して撮影していた。その映像データがデルトコロニーに届き、コロニー運営メンバーで見た。
我々はブラッド同盟を応援した。最初はブラッド同盟が優勢だったので、我々も盛り上がった。だが、次第に鬼人連盟が優勢になり始めた。
「どうなっているんだ?」
「乗組員のモチベーションよ。ブラッド同盟は一気に勝負をつけるつもりだったのに、鬼人連盟の粘りが凄いので焦りが出ているのよ」
スクルドが分析した。
その頃から、何か頭が重く感じるようになった。
「ゼン、どうしたの? 顔色が悪いわよ」
レギナの心配そうな顔が目に入る。
「いや、何だか頭が重い」
立ち上がろうとしたが、ふらついて倒れた。
「ゼン」
「マスター」
周りに皆が集まってきた。目を開けていられなくなった私はゆっくりと目を閉じる。その直後、暗い宇宙の中で漂っていた。
【あなたは基準に達しました。精霊雲をレベル1からレベル2に進化させる事ができます。実行しますか?】
何の事だか分からなかったが、それが非常に重要な事だと直感した。
「実行してくれ。ところでお前は誰なんだ?」
【私はゾロフィエーヌ様に作られた精霊雲です】
精霊雲だって? どうなっているのだ? 精霊雲の進化というのは、どうなるのだ? そう考えた直後に大きな圧力が精神に襲い掛かった。
その圧力に耐えていると、意識が周囲に広がるのを感じた。レギナとサリオの心を感じ、次に意識がデルトコロニーの外まで広がる。
様々な種族の精神を感じた。そして、周囲から正体不明のエネルギーが意識の中に飛び込んでくる。
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