第397話 ゾロフィスの大気
スプリガン族のフォージーは、中型輸送船ホロス号でメンフィスコロニーへ食料品を運んでいた。
「社長、いつまで不満そうな顔をしているつもりですか?」
ブリッジでフォージーの顔を見た船長のロギズが質問した。
「鬼人族が、食料品の値段を二割も上げると言っているんだぞ。それでもニコニコしろと言うのか?」
フォージーは食料品を売買する会社の社長だった。これ以上食料品が値上がりしたら、赤字になる。
「ニコニコしろとか言っていませんよ。鬼人連盟は戦争中なんですから、仕方ないじゃないですか」
ロギズ船長が言うと、フォージーは顔をしかめた。
鬼人連盟は加盟しているコロニーに安価な値段で食料品を販売していたのだが、戦争が始まって少しずつ食料品の値段を上げていた。軍事費が大きくなり、その影響で食料品を値上げしているのだとフォージーも理解していた。
「このまま上がると、相場より高くなりそうなんだぞ」
「そうなったら、連合のコロニーから購入するしかないですね」
敵陣営であるブラッド同盟のコロニーからは購入できないので、必然的に中立のコロニーである連合コロニーから購入する事になる。
「連合が、売ってくれると思うのか?」
「少し高くても買うと言えば、売ってくれるんじゃないですか?」
「でも、メンフィスコロニーの近くで食料品を販売している連合コロニーとなると、デルトコロニーくらいしかないぞ」
それを聞いたロギズ船長が顔をしかめた。
「それは難しい。デルトコロニーの連中は、スプリガン族を嫌っていますからな」
スプリガン族がデルトコロニーを脅したという話が広がっている。それを知っているフォージーは頭を抱えた。
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆
オーク帝国の帝都が砲艦の墜落により壊滅した様子は、ステルス偵察艦が撮影していた。その映像データが送られてきたので確認した。
ブリッジのメインモニターに映し出された結末は、悲惨なものだった。
「オーク族が
映像を見たレギナが言った。
「あの砲艦は、どうして荷電粒子砲を撃たずに体当たりしたのでしゅか?」
サリオがレギナに尋ねた。
「荷電粒子砲が加熱して、撃てない状態だったのよ」
「そういう事でしゅか。でも、体当たりせずに接近して船体で押せば、欠片の軌道を変えられたと思いましゅけど」
私も同意するように頷いた。
「興奮状態になっていて、他の選択肢を思い付かなかったのだろう。オークらしい」
「せっかく被害が最小になるような軌道を計算したのに」
スクルドが不満そうに言った。あのステルス隕石爆弾は、大気圏で爆発して欠片が海に落ちるような軌道を飛んでいたのだ。
「警告だったのだけどな。皇帝が死んでどうなるんだろう?」
この時点ではオーク帝国で内戦が始まったというニュースは届いていなかった。
「当分の間は、こちらにちょっかいを出しゅ余裕がないはずでしゅ。その間にボルガート星系の防衛力強化とメルカルナ星系の惑星改造を進めましょう」
「そうだな。大気の状態はどうだ?」
「もう少しで呼吸可能になりそうでしゅ。ただ惑星環境防御バリアが完成しゅるまでは、外には出られないみたいでしゅ」
惑星ゾロフィスの平均気温は、六十度を超えている。ゾロフィスの地上実験農場を含む研究施設が建設されている近くに惑星環境防御バリア発生施設の建設が進んでおり、数日で完成する。
そして、惑星環境防御バリア発生施設が完成して試験を行う事になった。
「3、2、1、バリア展開」
その瞬間、惑星ゾロフィスを包み込むように惑星環境防御バリアが展開した。このバリアは一日中稼働し、一ヶ月後にはゾロフィスの大気が快適な温度になるはずだ。但し、地球と同じように暑い地域と寒い地域があるので、人間が快適に暮らせる土地は全体の三割ほどになるだろう。
同じ施設をゾロフィスの二ヶ所で建設している。一つは予備、もう一つは整備するために必要なのだ。それに加えて大気の調整が行われ、植物や人間にとって適正な大気成分となった。今のところ機械的に調整しているが、将来的には自然環境が自動的に大気成分を維持するようにしなければならない。
三ヶ月後、外に出れるようになると本格的な都市建設が始まった。その資金はデルトアースの採掘事業で稼ぎ出した利益を使う。
地上で様々な工場の建設が始まり、それに従ってゾロフィスの人口が急速に増え始めた。広大な土地を開拓して農地にする工事も行う。これまでの研究で大量の窒素を加えて土壌改良すると良い農地になる事が分かっていた。
「ゾロフィスの産業は、何がいいだろうか?」
私がサリオたちに質問すると、皆が考えるような顔になる。
「まずは、このメルカルナ星系だけで自立できる事を目指すべきよ」
レギナの意見は自立だった。
「自立というのは重要ね。でも、その前に惑星改造を完了しなければならないわ。それには大きな資金が必要よ。いつまでもボルガート星系の採掘事業に頼る訳にはいかないわ」
スクルドの意見も納得できるものだった。採掘事業というのは、新しい鉱脈が次々に発見できれば続けられるが、発見できなければ終わってしまう。
「まさか、デルトアースの資源が枯渇すると言っているのでしゅか?」
サリオが確認した。
「調査では、数百年分の資源があると分かっているわ。でも、たったの数百年分よ」
数百年分があるのなら十分だと思うけど、スクルドは不十分だという。たぶんゾロフィスの改造は子孫の時代にまで続くと考えているのだろう。
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