第399話 精霊雲レベル2
意識に大量のエネルギーが飛び込んで、意識の拡大が止まらない。意識は第七小惑星帯を超え、第六小惑星帯に近付いていた。
その第六小惑星帯で鬼人連盟とブラッド同盟が戦っていた。鬼人連盟の戦艦が大型荷電粒子砲六門を一斉射撃すると、六個のプラズマ弾がブラッド同盟の戦艦に襲い掛かる。バリアに命中したプラズマ弾が弾き飛ばされたが、そのバリアが揺らいだ。
それに気付いた鬼人連盟の戦艦二隻が、バリアが揺らいだ戦艦に大型荷電粒子砲の攻撃を集中させた。次々にプラズマ弾がバリアに命中し、ついにバリアが崩壊した。
次の瞬間、バリアをなくした戦艦にプラズマ弾やレーザー光が命中する。頑丈な戦艦の装甲に穴が空いて内部で爆発が起きた。連続した爆発が起きると、その戦艦は制御を失ったように宇宙を漂い始めた。
【精霊雲を再構築します】
また声が頭の中で響いた。広大な宙域に広がった意識が縮小を始める。第七小惑星帯から第八小惑星帯と縮まり、デルトコロニーの内部にまで小さくなった。
そして、最終的には自分の体内に凄まじいパワーを秘めた精霊雲が形成された。この精霊雲は何ができるのだろう? 少し考えるだけで天震力や垓力、雷乾力の制御力が数段上がったと分かった。
「ゼン、聞こえる。お願い目を開けて」
レギナの声が聞こえた。その声には必死の思いが込められており、心がじんわりと暖かくなる。俺はレギナの声に応えようと必死で目を開けようとする。
すると、頭がズキリと痛んだ。
「ううっ」
呻き声を上げながら目を開けると、レギナが抱きついてきた。その目には涙が浮かんでおり、かなり心配させたようだ。隣にはサリオも立っており、心配そうに寝ている私の顔を覗き込んでいる。
「レギナ、もう大丈夫だよ。ゾロフィエーヌが私の中に作った精霊雲が進化したようなのだ」
レギナやサリオが『何だそれ?』という顔をする。
「昔、話した事があっただろ。ゾロフィエーヌと遭遇した時、天震力などを扱う精霊雲というものを作ってもらったんだ。それがレベル1からレベル2に進化したらしい」
「何が変わったのでしゅか?」
サリオが質問してきた。
「天震力の制御力なんかが、強化されたのは感じたのだけど、まだ詳しい事は分からない」
私は精霊雲に話し掛けて詳しい事を聞こうとしたのだけど、精霊雲が答える事はなかった。ただ進化した精霊雲は面白い機能が追加されたのが分かった。それは近くにある人工知能にアクセスする事ができるようになったのだ。
私は精霊雲と情報支援バトラーを繋げて精霊雲が扱える天震力の制御などを情報支援バトラーがサポートする事ができるようにした。
つまり天震力を自分で制御しなくても扱う事ができるのだ。しかも情報支援バトラーが扱う場合は、細かい単位で数値制御できるので、魔導装甲と魔導翼の制御を任せると戦いやすくなりそうだ。
「そうだ。艦隊戦はどうなった?」
艦隊戦の結果を尋ねると、レギナが顔を曇らせた。
「鬼人連盟が勝利したわ。ブラッド同盟の戦艦一隻がロストした後、押しまくられて半数以上の艦船がロストしたの」
最悪だ。ナインリングワールドの主導権が鬼人族に渡ってしまった。
「連合は、どれほど抵抗できるだろうか?」
「当分の間は、今まで通りだと思いましゅよ。ただナインリングワールドの権益を鬼人連盟に奪われるかもしれないという噂がありましゅ」
デルトコロニーが持つ権益というと、惑星ツカールにあるガス採掘事業になる。この事業から上がる利益も今では膨大なものになり、今期は四兆クレビットほどだったはずだ。
その権益を奪われるのは、デルトコロニーにとって大きな痛手となる。どうやって守れば良いのだろう?
「デルトコロニーが狙われるとしたら、惑星ツカールのガス採掘事業か」
「それはダメでしゅ」
サリオが大声を出した
「待って。ゼンは回復して起きたばかりなのよ。休ませましょう」
レギナが部屋からサリオやスクルドを追い出した。
「おいおい、私は病気ではないんだぞ」
「でも、顔をしかめているわよ。頭が痛いんじゃないの?」
「少しだけ痛い」
「だったら、休まないとダメよ」
これだけ私の事を心配する人が居る。そう思うと心が暖かくなった。レギナは美人である。それにしっかりしており、優しい面もある。デートにでも誘うか……いやいや、そんな場合じゃなかった。
「ゼン、大人しく寝なさい」
レギナが女神に見えた。
「分かった」
そう言って目を瞑るとすぐに寝てしまった。
翌日、起きると頭痛も消えており、体中に活力が満ちていた。
「調子がいいな」
「それは精霊雲がレベルアップした事と関係するの?」
「わっ……びっくりした」
「私に気付かなかったの?」
スクルドが看病してくれていたようだ。
「お前が見守ってくれているなんて、バグでも発生したのか?」
「違うわ。精霊雲の進化が、どのように身体に影響するのかを調べていたのよ。動物実験のようなものね」
「例えが、悪すぎる。何か分かったのか?」
「理想的な状態よ。悪いところは一つもないわ」
「良かった。これでレギナに心配を掛けずに働ける」
会議室へ行こう。そう思った時、身体が浮いて会議室に向かって飛び始めた。
「あれっ、どうなっているんだ?」
「マスター、何をしているのです」
「いや、身体が浮いて」
俺は意識的に『止まれ』と念じた。すると、空中に止まってストンと通路に着地した。何かが変わったようだ。
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