第194話 マギヌの開発方法

 デルトコロニーに到着してロードパレスに戻ると、溜まっている仕事がどれほどあるか確認した。はあー、見なきゃ良かった。仕事がたっぷりと溜まっていた。


「この辺の仕事も整理して、他の人に任せられるものは、任せるように考えないとダメだな」

 それから数日間は、溜まった仕事を片付けるのに使った。


 仕事を片付けた翌日、ロードパレスのリビングでだらだらしていると、レギナがリビングに入ってきた。

「ゼン、目が死んでいるぞ?」

「溜まっていた仕事が、やっと片付いたばかりだから、何もやる気が起きないという目なんだ」


「まあ、いいけど。あたしはメルモス星人のマギヌについて、調べていたのだけど、いくつかの小技マギヌと呼ばれるものと、メルモス星人が残した高等マギヌの一つを使えるようになった」


「それは凄いな。どんなマギヌを使えるようになったんだ?」

「小技は『晶光マギヌ』『隠形マギヌ』『拘束マギヌ』など、高等マギヌは『翔翼マギヌ』が使えるようになったわよ」


 レギナは女性らしい喋り方をスクルドに習っており、偶に女性らしい喋り方をするようになった。但し、習う相手を間違っていると思う。


「『翔翼マギヌ』というのは?」

「空を飛ぶための翼を作り出すマギヌよ。これがあれば、惑星の空も宇宙も飛べるらしい」

「それはいいな。私も習得しよう」


 詳しい事を聞くと、最高時速が二百キロくらいだそうだ。短距離の移動には使えるが、これで戦闘は無理だろう。


 そんな事を話していると、パムとソニャ、スクルドがリビングに入ってきた。

「じぇん、魔法はまだ?」

 パムが質問してきた。魔法というのはマギヌの事である。

「ちゃんと勉強した?」

 マギヌを習得するためには、基本的な知識を理解していないとダメなのだ。ただパムに基礎知識を教えるのは難しかった。それを研究して教えているのはスクルドだ。


 パムが分かるようなレベルにまで噛み砕いて教えるのは大変だったらしい。

「ん、たくさん勉強したんだよ」

 パムは頑張ったと胸を張る。

「スクルド、教育ソフトを使って教えても、大丈夫そうなのか?」


「パムは本当に頑張ったから、大丈夫よ」

「やったー」

 パムがスクルドに抱きつくと、スクルドは優しくパムを抱え上げた。ソニャも嬉しそうにしている。


 それから子供たちのために構築した子供用マギヌ教育ソフトを使い、ソニャとパムにいくつかの小技マギヌを教えた。教えたマギヌは『晶光マギヌ』『引き寄せマギヌ』『浮遊マギヌ』『拡声マギヌ』『花火マギヌ』などである。


 小技マギヌを習得したソニャとパムは、変な事を始めた。扇風機のような強力ファンを背中に背負い、両手に団扇うちわみたいなものを持って『浮遊マギヌ』を使うという方法で、空中を飛び始めたのだ。


「パムたちは変な事を始めたな」

 ロードパレスの庭でふわふわと飛び回る子供たちの姿が見ながら言った。

「面白いようでしゅ」

 サリオは、ソニャたちが楽しそうに遊んでいる姿を見て笑った。


 その後、私も高等マギヌについて本格的な研究を始めた。特に研究したのが魔導装甲に似た『防護マギヌ』と『翔翼マギヌ』である。


 『防護マギヌ』は、垓力で形成されたパワードスーツのようなものを展開するマギヌである。魔導装甲より防御力は劣るが、エネルギー源が垓力なので一度発動すると自動的に展開し続ける事ができた。


「これは楽だけど、防御力が弱いな」

 その呟きを聞いたスクルドが近付いてきた。

「メルモス星人が残した高等マギヌ教育システムには、開発方法もあったのよね。それを使って『防護マギヌ』を改造できないの?」


「時間が掛かるけど可能だ。でも、一人で開発するのは大変そうだから、マギヌ開発チームを編成して任せようかな」


「それがいいかもしれないわね。マギヌを開発できる人材を育てられれば、本当にデルトコロニーの産業として成立するかもしれないわ」


 今までのデルトコロニーの産業は、ナインリングワールドの第九小惑星帯から第七小惑星帯にあるスペースコロニーを商売の相手として発展させてきた。


 ただマギヌなら、ナインリングワールドだけではなく他の星にも商圏を広げられるかもしれない。普通の商品だと輸送に大きな費用が掛かるので中々商売を広げられないが、マギヌは情報の塊なので輸送は楽だ。


 ただ開発チームのメンバーはボソル感応力がないとダメなので、デルトコロニーの住民の中に何人ほど才能を持つ者が居るかが問題になる。そんな心配をしていたら、サリオが凄いアイデアを出した。


 それはマギヌ開発用の人工知能を開発し、その人工知能に高等マギヌの知識をコピーして仮想空間にマギヌ開発メタバースを構築するというものだった。


 このマギヌ開発メタバースでは、ボソル感応力を持たない者でも開発を行う事ができるという利点があった。それにマギヌの知識を管理する事が容易になるので、その辺も都合が良い。


 私が最初に考えたボソル感応力がある者を集めてチームを編成する方法だと、メンバーの一人ひとりに高等マギヌ教育システムを使って学習させようと考えていたので、知識を管理するのが難しかった。


 サリオが考えたメタバース開発環境方式だと、そのメタバースにアクセスしている間だけ、人工知能が持つ高等マギヌの知識を共有できるという仕組みにするというものだった。


 サリオのアイデアを採用し、スクルドとサリオにマギヌ開発用の人工知能を開発してもらう事にした。それらの手配が終ると、レギナが惑星ボランで手に入れた『中級龍珠工学』の知識を使い、女王ギガアントの龍珠を加工する作業を始めた。


 この龍珠が加工できれば、星間ネットワークにアクセスして宙域同盟に所属する各星の情報を手に入れる事ができる。


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