第192話 マギヌ
【高等マギヌ教育システムⅢです。最初から始めますか?】
思念による対話システムか。それにマギヌ? ああ、魔導技の一種であるマギヌか。このカードにはマギヌについての教育アプリが入っているのか。
マギヌは、メルモス星人が発明して発展させた技術である。メルモス星人というのは、まだ宙域同盟に加盟していない四つの星を支配していた種族だった。
但し、このメルモス星人にファーストコンタクトしたのが、オーク帝国だったというのが不運だった。オーク帝国はメルモス星人を支配下に置こうとした。それに反発したメルモス星人は徹底的に戦った。
メルモス星人が互角に戦えたのは最初だけで、最終的に宙域同盟の科学技術で建造された軍艦を持つオーク帝国には勝てず、故郷の星を破壊されたらしい。
生き残ったメルモス星人は宇宙に散らばった。それらの人々がマギヌを広めたようだ。ただメルモス星人が広めたマギヌの技術は初歩的なものだけで、高等な技術は広めなかった。
これがメルモス星人が発展させた高等マギヌ技術だとすると、大発見という事になる。垓力をエネルギー源とする小技マギヌは、様々な種族が研究を始めた。それらの研究をした種族の中には、イノーガー軍団を生み出した種族もあり、イノーガー軍団誕生の原因にもなったと聞いている。
その時、遠くで何かの音がした。宇宙船の外に何かが来たようだ。私はオレンジ色のカードを異層ペンダントに仕舞うと宇宙船の外に出た。
「二匹目の女王メガアント?」
そう思ったのだが、倒した女王ギガアントと比べると一回り小さい気がする。それに外殻の色が黒に銀色が散らばっているような模様だ。あの女王ギガアントは赤っぽい黒色をしていたので種類が違うのかもしれない。
「取り敢えず、『王様ギガアント』という事にしよう」
その瞬間、王様ギガアントの頭にある触手のようなものから、紅いレーザー光を撃ち出された。それが魔導装甲に当たる。魔導装甲は受け止めたが、揺らぎ始めた。
危険を感じた私は逃げ出した。女王ギガアントと戦った疲れも残っているので、戦うのを避けたのだ。
逃げ出す途中で王様ギガアントの数が二匹、三匹と増えたので、逃げるという判断は正解だった。情報支援バトラーが作った地図を見ながら地上まで逃げ、気付いた時には王様ギガアントの姿は見えなくなっていた。
ただ私の代わりに偵察ドローンが犠牲になったらしい。一機も戻ってこない。収穫は女王ギガアントの龍珠と貴金属、それに高等マギヌ教育システムだ。十分だろう。
街に戻り、屠龍猟兵ギルドに報告した。ここで狩りをする場合、胸に実績収集バッジを付ける事になっている。なので、女王ギガアントと戦い、貴金属を回収した事は報告されているだろう。
「女王ギガアントを討伐した事は、実績ににゃります」
ワーキャット族のモニカセンター長が言った。
「金庫室ではいろいろと回収したようですが、その詳細を報告してもらえますか?」
「いや、報告しない。女王ギガアントと王様ギガアントの情報だけで十分だろう」
モニカセンター長は頷いた。
「にゃるほど。個人的には興味がありますが、ギルドとしては十分です」
報告を終えると、私はカズサに戻った。カズサのリビングに入ると、パムが飛び付いてきた。
「じぇん、お帰り」
パムを抱きかかえると、嬉しそうに笑っている。
「ただいま、今日は何をしていたんだ?」
「あのね。植物園にいったの。楽しかった」
パムが楽しそうに喋り始めた。それを聞きながらソファーに身体を埋める。
「マスター、疲れているようね?」
「ああ、女王ギガアントと戦ってきた」
「ちょっと調べに、行ったんじゃなかったの?」
大きな溜息を吐いた。
「気になる事があって調べていたら、女王ギガアントと遭遇した」
「それで倒したの? 龍珠は?」
「もちろんだ。但し、まだ解体していないから、龍珠が無事かどうかは分からない」
戦闘で龍珠が壊れるという事は、よくある事なのだ。スクルドと話しているうちに、サリオやレギナも集まってきた。それで地底迷宮で何があったか話す事になった。
女王ギガアントが凄い音を出して攻撃してきたと話すと、パムが目を丸くしていた。
「それで、どうしたんでしゅ?」
一緒に話を聞いていたソニャが質問してきた。
「初めは魔導装甲を調節して、音を遮ろうと思ったんだ。だけど、頭が痛くて魔導装甲の調整はできなかった。そこで流星スピアに天震力を注ぎ込んで、メテオシャワーを発動して攻撃した」
多数の天震力の槍が現れて女王ギガアントの方に飛んでいく様子を話すと、パムが跳び上がって喜んだ。その後に女王ギガアントを倒し、墜落した宇宙船に入ったと話すと、サリオが身を乗り出してきた。
「それで、どの種族の宇宙船だったか、分かったのでしゅか?」
「たぶん、メルモス星人の船だったんじゃないかと思う」
「メルモス星人? なぜ分かったのでしゅ?」
「これだ」
高等マギヌ教育システムのカードを取り出して見せた。レギナが手に取ろうとした。
「待って。これに触れると話し掛けてくるから、OKしないでくれ」
レギナが頷いてカードに触れる。その瞬間、レギナの顔が強張った。そして、意志を振り絞るようにして手を離した。
「これは……マギヌの学習システムなの?」
「そうらしい」
それを聞いたサリオも触った。だが、首を傾げる。
「何も話し掛けてこなかったでしゅ」
おかしいなと思い、全員に触ってもらう。頭の中に響く声が聞こえたのは、レギナ、ソニャ、パムの三人で、サリオ、サシャ、ラドルは聞こえなかったそうだ。
「もしかすると、ボソル感応力がある者にしか、聞こえないのかもしれない」
「ええーっ」「そんなー」
サシャとラドルが不満そうに声を上げた。逆にソニャとパムが目を輝かせる。
「ゼン、私たちもマギヌを使えるようになるのでしゅか?」
「勉強すれば、使えうようになるかもしれない。でも、もう少し研究しないと確実な事は分からない」
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