第190話 ギガアント
ペリモダ地底迷宮について書かれている情報をできるだけ調べ上げた後、ホバーバイクで街の南西へ向かった。ペリモダ地底迷宮はもう少しで砂漠と呼ばれるほど乾燥した荒野を二百キロほど飛んだ場所にあった。
そこはガジュマルのような木が生い茂る地域で、気候は熱帯に近いようだ。現在地上用のバイオ戦闘服を着ているので暑くはないが、普通の服なら汗をダラダラと流すほどの気温だ。
宇宙ではMM型機動甲冑を着装するのだが、空気を心配する必要がない地上では最近作ったバイオ戦闘服を着ている。このバイオ戦闘服は外気温を遮断し、温度を調整してくれる。
頑丈さではMM型機動甲冑の方が上なのだが、地上ではバイオ戦闘服の方が楽だ。これは防刃防弾の性能が高く、十分だと思っていた。と言うのは、魔導装甲の性能が上がっていたからだ。
ペリモダ地底迷宮の入り口付近に到着した私は、ホバーバイクを着陸させた。そのホバーバイクを異層ペンダントに仕舞ってから、周りを見回す。雑草が生い茂る地面のあちこちに大きな穴が開いている。
「これが入り口か」
その穴は直径が五メートルほどもあり、斜め下に向かって伸びている。私は魔導装甲を展開してから穴に入った。穴の中は真っ暗で明かりが必要だ。
「試してみるか」
『幻豹』という二つ名を持つ魔導師レオから、垓力をエネルギー源とする魔導技の一種であるマギヌをいくつか教えてもらっていた。その中に晶光マギヌというものがあり、その小技マギヌを使う。
それは垓力を使って光の水晶のようなものを作るマギヌだった。その光の水晶を頭の上に固定する。光の水晶は、私が移動すると同じように移動した。
私が使った小技マギヌにより照らされた穴の中を進む。穴の奥は地下通路となっており、十人の人間が並んで通れるほどの大きさがあった。その地下通路がずっと先まで続いており、同じところをグルグルと回っているのではないか、と錯覚しそうだ。念のために情報支援バトラーを呼び出し、地底迷宮の地図を作るように命じた。
それからかなり進んで精神的に疲れてきた。そんな時に分かれ道に遭遇し、どちらに進むか悩む。
「左か右か? これは神様に頼るしかないな。……
自分でも、これで良いのかと思わないでもなかった。ただ何かヒントがある訳でもない。私は神様のお告げに従い進んだ。
そして、蟻型モンスターであるギガアントの群れと遭遇し、体長三メートルほどのギガアントに囲まれた。
「クッ、神は死んだ」
それからは必死だった。粒子貫通弾でギガアントを撃退しながら逃げ回り、よく分からない場所まで来ていた。
威力のある魔導技を使えばギガアントを殲滅できるのだが、そうすると自分までダメージを受ける事になる。こういう狭い場所で使えるような魔導技はないのだろうか?
ギガアントが思っていた以上にタフで、頭などの急所に粒子貫通弾が命中しないと仕留められない。はあっ、戦闘用ロボットでも開発して連れてくれば良かった。
もしかしたら、ショットガンのような魔導技なら、簡単に開発できるんじゃないか。そう思い付いた私は、試してみる事にした。ボソル粒子を一つに集めるのではなく十数個の弾丸にして撃ち出す。その散弾がギガアントの頭を中心に散らばって命中した。
「散弾にしても、ギガアントの外殻を貫通するだけの威力がある。発動する時間さえ短縮できれば使える」
ソロで狩りをする時は、何となく独り言が増える。
『粒子散弾』と名付けた魔導技の御蔭で、効率的にギガアントを倒せるようになったが、逃げ出した先々でギガアントの群れと遭遇し、戦う羽目になった。
「はあはあ……疲れた」
やっと追い掛けてくるギガアントを全滅し、考える余裕ができた。考えた結果、仕切り直すために一度外に出る事にした。そこで情報支援バトラーを呼び出す。
「地図を表示してくれ」
『畏まりました』
頭の中に地底迷宮の地図が浮かび上がる。それを見ると、地底迷宮の一部が分かった。すると、ギガアントの群れが配置されている場所が気になった。
いくつか遭遇したギガアントの群れは、何かを守るために配置されているようだ。ちょっと調べてみよう。私はギガアントの群れと遭遇した場所へ向かう。
直径三十メートルほどのドーム型になっている空間に、二十匹ほどのギガアントがうろうろしている。前回はすぐに逃げ出したのだが、今回はギガアントを殲滅して奥を確かめる事にした。
ギガアントたちの中に飛び込むと、粒子散弾を撃ちまくる。何度も何度も粒子散弾を発動するうちに、コツが分かってきた。結果、発動時間が短縮して射撃の精度が上がる。
短時間でギガアントの群れを殲滅。ギガアントは龍珠を持っておらず、有用なのは硬い外殻だけなので剥ぎ取りはやめた。それより何があるのか気になってドーム型空間の奥に向かう。すると、一回り小さな通路があった。
その通路はギガアントが造ったものではなく、人間が造ったように見える。その通路を進むと、大きな空間があった。そこには知的生命体が造ったと思われる人工物の一部が見えた。
「これは宇宙船の一部? それとも建物の一部なのか?」
暗い地底に何百年、何千年と眠っていたものらしい。近くに寄って詳しく調べ始める。その時、背後で何か大きな存在が近付いてくる気配がした。
私は急いで振り返る。目に入ったのは、ギガアントとは比べ物にならないほど巨大な蟻型モンスターだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます