第189話 ペリモダ地底迷宮

「マスターは、屠龍猟兵ランクCだったわよね?」

 スクルドが確認した。

「それがどうしたんだ?」

「この惑星ボランには、屠龍猟兵ランクB以上しか入れない狩り場があると聞いているわ」


「入れないという訳じゃない。狩り場には屠龍猟兵ギルドが推奨している基準があって、南西のペリモダ地底迷宮は『B』以上、西のアモナ高地は『A』以上になっているというだけだ。ギルドが禁止している訳じゃない」


 罰則がある訳じゃないので、禁止ではない。ただ『C』以上だとされているギルダ峡谷へランクDの屠龍猟兵が行けば、ギルドは無謀なやつだと評価する。但し、『C』の屠龍猟兵とチームを組んで行った場合は別だ。


 そういう状況なので、一般的にはギルドが禁止していると思われている。ちなみに、私も勘違いしていた者の一人だ。


「そのペリモダ地底迷宮に、興味があるの」

 スクルドの言葉を聞いた私は肩を竦めた。

「私はまだランクCだから、行かないぞ」

「しかし、今回母王スパイダーを倒しているわ。それを屠龍猟兵ギルドに報告したら、ランクが上がるんじゃない」


 そう言われてみると、脅威度5の巡洋サーペントや焔竜バスチルを倒している。それらも一緒に報告すれば、『A』は無理でも『B』には上がりそうだ。


 ただ惑星ボランでモンスターを狩っている時は、胸に付けている実績収集バッジで倒したモンスターの記録が残るが、他の星や宇宙で倒したモンスターについては、屠龍猟兵ギルドの記録として残っているかどうか分からない。


 その翌日、屠龍猟兵ギルドへ行ってランクが上がらないか相談してみた。現在のギルド支部長兼センター長は、ワーキャット族のモニカという女性に変わっていた。


 そのモニカセンター長の部屋で報告と説明をした。

「母王スパイダーに関しては、すでに実績としてカウントしています。ランクBとにゃるためには、少し足りにゃいようです。ただ巡洋サーペントや焔竜バスチルは、他の星のギルド支部に確認しにゃければにゃりません」


「確認できるまで、何日くらい掛かりますか?」

「五日ほどでしょう」

 屠龍猟兵ギルドは、宙域同盟が構築した大規模な星間ネットワークを利用しており、屠龍猟兵ギルドの支部がある星と連絡を取る事ができる。但し、多額の通信費が掛かるので、屠龍猟兵から申請されないと連絡を取る事はない。


 取り敢えず、屠龍猟兵ランクを上げる申請をした私は、子供たちと遊びながら結果が分かるまでの数日を過ごす事になった。


「ランクが『B』になったら、ペリモダ地底迷宮へ狩りに行くのでしゅか?」

 サリオが尋ねた。

「どんな狩り場か、確かめたいと思っている。但し、ギルダ峡谷のように天神族の秘宝がある訳じゃないから、攻略しようとは思っていない」


「スクルドは、なぜペリモダ地底迷宮に興味があるのでしゅか?」

「レギナが手に入れた『中級龍珠工学』について、話を聞いたのよ。そうしたら、地底迷宮に居る女王ギガアントの龍珠を加工する技術があるのを知ったの」


「女王ギガアントの龍珠でしゅか? それは何になるのでしゅ?」

「星間ネットワークに、アクセスできる通信機よ」

 そういう龍珠があるなら、私も欲しい。ただ女王ギガアントか。ペリモダ地底迷宮の奥深くに巣食っているのだろうな。


 それからペリモダ地底迷宮について調べ始めた。地底迷宮は蟻型モンスターの巣だという事が知られている。その巣は迷路となっており、蟻型モンスターたちは何かを守っているという伝説があるようだ。それらの事をサリオたちにも教えた。


「蟻型モンスターが、何を守っているというのでしゅ?」

 サリオが質問してきた。

「屠龍猟兵ギルドも分からないようだ」

「天神族に、関係あるものでしゅかね?」

「ここから天神族が去った後に、ペリモダ地底迷宮ができたそうだから、関係しているかは微妙だな」


 蟻型モンスターが守っているものには興味がある。だが、長期間迷宮を探し回るのはリスクが高すぎると思う。


「そんな正体不明なものを探し回るのは、リスクが高すぎる」

「でも、スクルドが欲しいと言っている龍珠も、迷宮の奥深くに居る女王ギガアントと戦う事になりましゅ。リスクは同じじゃないのでしゅか?」


 サリオは同じリスクを冒すなら正体不明のものも探せば良い、と言っているのではなく、女王ギガアントと戦うのもやめた方が良いと言っているのだ。


「レギナは、ペリモダ地底迷宮に行かないの?」

 スクルドが質問した。

「あたしは、地下迷宮のような狭い場所で戦うのが苦手なんだよね」

 そう言ったレギナが肩を竦めた。


 それから数日すぎて屠龍猟兵ランクが『B』になったという報せがきた。私がランクBになったので、レギナもチームを組んで同行する事はできる。ちなみに、レギナの屠龍猟兵ランクも上がっており、『C』になっている。


 私がペリモダ地底迷宮を調べている間、レギナは暴竜ベルゴナ狩りをしていたようだ。そして、二匹のベルゴナを狩っている。


「レギナ、異層ボックスを増やしたかったのかい?」

 暴竜ベルゴナの龍珠で異層ペンダントを作るように依頼したと聞いたので確認した。

「あたしの分じゃなくて、サリオとソニャ、サシャとラドルに使ってもらうつもりなの」


 それを聞いてサリオたち四人が喜んだ。ただ仲間外れになったと感じたパムが頬を膨らませて怒った。

「パムは?」


「そうだな。パムは私の異層ペンダントを使えるようにしようか」

 それを聞いたパムは、跳び上がって喜んだ。


「ところで、レギナもペリモダ地底迷宮へ行く?」

「あたしは、ゆっくりと休暇を楽しむ事にする」

 そういう事で一人でペリモダ地底迷宮に行く事になった。無理はしないつもりなので、大丈夫だろう。


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