第46話
「“真実の腕輪”の精度はどのくらいのものなのでしょうか?」
「はぁ? 精度?」
莉々子は深く頷いた。
検出率は大切だ。
間違って本当のことを言っているのに作動してしまっては大惨事だし、どの程度の虚偽なら作動するのかというその基準によっても差は出てくるだろう。
「嘘をついたら必ず、100%、切り落とされるのですか?」
「そ、そうよ」
ずずい、と詰め寄る莉々子に、アンナは押されて一歩下がる。
「どんなに軽い嘘でも? 例えば、掃除をさぼったとか」
「そうよ! さっきからそう言ってんじゃない!!」
「本人が嘘だと思っていないことでも、事実と異なれば切り落とされますか?」
「はぁっ!?」
「誤解しているだけで、本人は心から信じていたとしても、齟齬が生じれば発動するのですか?」
「それは……」
アンナは言葉に詰まる。
しかし、莉々子の質問に思うところがあったのか、しばし考え込むと「そうね……」と慎重に口を開いた。
「今まで考えたことはなかったけど、それは発動しないんじゃないかしら? あくまでも虚偽を見抜くのが目的だから……、本人が虚偽と認識していないと発動しないんじゃないかしら?」
なるほど、あくまで主観による評価ということか。
確かにことの真偽など曖昧なものだし、心情的な真偽を問う際に、例えばそれが確信犯だったのか否かを問う場合などは本人の主観で評価するしか方法がない。
100%という検出率は疑わしいが、少なくともそう思われる程度には高い精度なのだろう。
とすると、ユーゴが審判を避けたがっているのも頷ける。
ユーゴは清廉潔白とはほど遠い人物だ。
少なくとも、莉々子のことに関しては異世界人を姉と騙るという虚偽を犯しており、審判で例えばそのことについて訊ねられればあっさりとユーゴの手首は切り飛ばされるわけだ。
(手首、ということは、脈拍を測っているのだろうか?)
嘘発見器といえば、有名なのは脳波を見るものであるが、手首から脳波を測る魔法などのイレギュラーを除外すれば、順当に考えれば手首で測れるものなど脈拍か血流を流れる酸素量などになるだろう。
動揺の有無で脈拍は乱れる傾向があるため、それを嘘発見器として利用しているのか。
(つまり、“真実の腕輪”は脈拍計……?)
実物を見ずに判断するのは早計だが、その可能性が高い気がする。
異世界に転移したけどパワハラがしんどい 陸路りん @rikuro_rin
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異世界に転移したけどパワハラがしんどいの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます