じゃあね、永遠にお別れだよ
「む、迎え撃ちなさいッ!」
対して相手側も、シルキーの檄を受けた
無言のままに純白の大鎌を振るい、噛み砕かれたり打ち倒したりしても無言のままに起き上がってくる。無機質な殺意が、
「あっはははははははははははははッ!」
相手の命脈を奪って蘇り、永遠に戦い続ける不死の軍勢。アヲイの奴がこんな
「あ、アヲイ。もう止せ、わしなら、無事じゃ」
状況は一気にこちら有利に傾いておるが、わしには不安しかなかった。
かつてのわしのように、目覚めたばかりの
「ピサロ様、ここは私が行きます」
「ええ、頼みますよ。もう少し。カナメ君狙いでしたが、路線変更です」
彼女の軍勢に立ち向かっていったのは、シルキーじゃった。その右目に華開くのは、いつか見た
「守、射、創。守り咲け。
詠唱に伴って現れたのが、彼女を守るように展開された白銀の
「砕けろ、
純白の大鎌を受け止めた葉が、ガラスのように砕けた。直後、鋭い破片となった葉の残骸が、骸達に襲い掛かる。白骨を葉の破片で砕かれた骸の兵士達が、次々と倒れていった。
生体に流れておる命脈じゃないと、
「邪魔しないでよ、ピサロの腰巾着が。あたしはそこの車椅子のクソ野郎に用があるんですー」
「アポのない来客は、お断りします。いくら骸の兵士を投入してこようが、ピサロ様には指一本触れさせません。
シルキーが残った
「蹂躙しろ、骸共」
「例え
ひたすらに骸の兵士をぶつけるアヲイと、防ぎ続けるシルキーの耐久戦であった。骸の兵士達の突撃を白銀の葉が防ぎ、砕けることによって骸の兵士が倒れていく。
「…………」
アヲイは何も言わない。ただ静かに、骸の兵士達を突撃させるばかりである。戦術としての波状攻撃ならともかく、無為に行う戦力の逐次投入なぞ愚策も良いところじゃ。いたずらに兵士を失っておるだけだというのに、彼女はその口元に笑みを浮かべておった。
「知ってますかー、シルキーさーん。あたしってー、天才なんですよー」
アヲイが口から放ったのは、自慢じゃった。
「特に才能を感じられるって言われたのが、命脈の配分なんですー。ほら、あたしの強みって大鎌で相手から命脈を奪っての持久戦じゃないですかー。だから
確かにアヲイの一番の才能は、ペース配分じゃ。以前の浜辺でのように、下手をすれば一日中でも戦い続けることができる。
「そうですか。しかしその先生は死に、貴女もここで倒れる。これが現実です」
冷たく言い放つシルキー。いや、わし、まだ生きておるが。
「分からないんですかー? 恥ずかしー。そんなんじゃ大切なピサロ様が守れませんよー?」
「戯言を。手が出せないから口を出すとは、情けないと思わないのですか?」
いつもの煽り調子が戻ってきておるアヲイに、シルキーも全く動じておらん。その間でも、アヲイの全ての骸の兵士達を倒し終わったシルキー。彼女の周りには無数の黒い骨と純白の大鎌が、所狭しと散らばっていた。
「終わりです。せっかくの
「あっはははははははははッ!」
勝ち誇ったシルキーに対して、アヲイは笑った。笑いながら両手で地面に純白の大鎌を突き立てる。
「何勝手に終わらせてるんですかー、ダサーイ。本番は……これからだってのにさァッ!」
「なッ!?」
「起きなよ、骸共。
直後。彼女が大鎌を通して両手から大地に向かって流し込んだのは自身の命脈じゃった。それを受けて、バラバラになっていた黒い骨が独りでに動き始め、再び兵士の姿を形作っていく。
「言ったじゃないですかー、あたしはペース配分の天才だって。あれだけ大量の兵士を作ったから、もう作れないとでも思ったんですかー? ざーんねんでした、まだまだ序の口でーす。
「ば、馬鹿な。これほどの
相変わらず、意味不明なペース配分とタフネスよのう。青ざめたシルキーじゃが、彼女が表情を崩したのは初めてじゃないかのう。
「じゃあね、
「くっ、あっ、あああああああああああああッ!」
その後、シルキーも
「申し訳、ございません。ピサロ、様」
「いいえ。あなたは十二分に仕事を果たしてくれましたよ、シルキー」
地面に倒れ伏したシルキー。命に別状はなさそうに見えるが、多量に命脈を奪われた所為か、程なくして気を失った。ピサロの言葉を受け、その口元には笑みが残っておる。
「さーてと、あとはアンタだけだねー。言い残すことはありますかー? そこら中の
骸の兵士で輪を作り、車椅子のピサロを取り囲んだアヲイ。彼女自身も右足を引きずりつつも近づいていき、手に持った純白の大鎌の刃を彼へと向けている。勝負はついたな。
「よくやったぞ、アヲイ」
ようやく回復してきたので、わしは何とか立ち上がった。
「ッ!? せ、せんせー。生きて、たんですか?」
「勝手に殺すな。よくぞ
「え、えへへへ。ま、まあ、あたしならそれくらい当然って言うかー」
「じゃが一般人や関係のないメイドさん達に暴力を振ったことは許さん。説教の後で謝りに行くぞ」
「うっ。わ、わかりましたよー。あの時はああすれば良いって……」
「はははははははははははははははッ!」
突如として、ピサロの奴が笑い出した。なんじゃなんじゃ。
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