第七章 全面戦争 ④纏向接収

西暦247年。 


 難升米は張政の意を受け、使者として降伏を勧告する文を携え、纏向の都の宮城へ入って行った。


「卑弥呼弓様、久方振りにお目見え致し、残念ながら心よりお悔やみ申し上げます。このような結果と成ってしまい、本当に申し訳御座いません。


 不本意では御座いますが、大倭国を守る為已むを得ず、魏の帯方郡に武力の援軍をお願い致しました。

 

 悪意はあるが、近畿奴国も大倭国の一員です。狗奴国の思う様にはさせません。

 大倭国の倭王に置かれましては、連合を守る為の仕儀に他なりません。

 

 かつてご提案した時までは、大連合を組む事が最善であると思っておりましたが、今はもう、大倭国が邪馬台国を併呑し、纏向の都は大倭国が接収せざるを得ません。

 残念ながら、他に選択肢は御座いません。悪しからず、ご了承ください。

 

 魏の帯方郡より、塞曹掾史の張政殿が、援軍に来て下されました。

 つきましては、宮城を譲って頂く為、張政殿を改めて案内致しますので、ゆめゆめ粗相無き様お願いします」


 日を改めて張政が入城し、玉座に座った。


「卑弥呼弓殿、残念ながら、狗奴国は戦いに負けた。 

 潔く負けを認め、大倭国の配下と成るならば命は助けよう。国名は委奴国とする。

 

 邪馬台国の連合に加盟していた国々も同様に助けるが、邪馬台国の連合は解散し、改めて、大倭国の連合に加盟して貰う。

 

 纏向の都は委奴国の都だが、大倭国連合の東の都として、進駐軍に使わせて貰う。

 委奴国の王は、大倭国の一大率として、難升米に務めて貰おうと思う、如何かな?

 

 難升米は、かつての委奴国の出身だから、纏向の都も治められるだろう。

 難升米ならば、もし反乱があっても、十分に抑えられるだろう」


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