第七章 全面戦争 ③奈良侵攻

西暦247年。 


 京田辺の砦は、奈良盆地を守る最後の関門だった。

 奈良盆地の両側に聳える丘の間に、四キロに渡る土塁壁と関所が設けられていた。土塁壁の前には、水濠が横たわっていた。


 壁と頑丈な門が在るだけで他に取り掛かり様が無かったので、重い丸太を槌として関門を破壊する、衝車が投入された。


「エイ・エイ・オー」


 ヨイトマケのような、掛け声を掛けて、梵鐘を突く橦木のように丸太を揺らして、分厚い門を何度も何度も叩き続け、遂に破壊に成功した。


 門を突破すると、張政軍は一直線に奈良の都を目指した。


 邪馬台国軍の抵抗も激しかったが、如何せん、軍の主力は近畿奴国侵略の最中で、張政軍と筑後奴国を主力とする大倭国軍の、敵には為り得なかった。


 あっと言う間に奈良盆地を南下し、狗奴国の中央付近にある纏向の都に到達した。然しそこには、二重にも三重にも都を囲む、環濠が水を湛えていた。

 濠の対岸には、狗古智卑狗率いる五百の宮城守備隊が、連弩を構えて待っていた。


「一斉に、撃て」


 狗古智卑狗の命により、空を覆うばかりの矢が次々と放たれたが、届かなかった。


 一方、紀ノ川の河口に着いた邪馬壹国軍と投馬国軍は、数の多さに物を言わせて、狛人が守る岩出・橋本・五條・御所の砦を次々と破りながら、兵を進めて行った。


 こうして北と南から、奈良の都・纏向の挟み撃ちとなった。


 これで狗奴国の卑弥呼弓と狗古智卑狗は、已むを得ず籠城せざるを得なくなった。

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