④援軍派遣
西暦247年、夏。
帯方郡から伊都国へ、魏の率然中郎将である難升米宛に、文書で連絡があった。
「朝廷より難升米殿に下賜される詔書と黄幢を、帯方郡にて預かっている。
濊や韓と紛争が起き、帯方太守弓遵が戦死して、仮授する事が出来なかった。
戦死した弓遵に代わり、王頎(おうき)が帯方郡太守に着任した。
濊や韓との紛争に勝利して、やっと仮授する事が出来るようになった。
使者を派遣し、詔書と黄幢と武器を持って伊都国へ行き、難升米殿に拝仮したい。
ついては、難升米殿が伊都国で受け取られるに当たり、都合を連絡されたし」
その時、難升米は狗奴国へ行き、卑弥弓呼の説得を試みており、不在だった。
そのため文書は、一大率の難升米ではなく、祭祀殿の卑弥呼の元に、回送された。
難升米から聞いてないので、卑弥呼は詔書の本当の意味を、理解していなかった。
難升米には連絡したものの、返答が来る前に代理で連絡しても構わないと考えた。
卑弥呼は姫氏が後ろめたくて、倭王の天帯彦に無断で、使者を派遣する事にした。
取り敢えず、大倭連合の倭女王の使者として、載斯と烏越を帯方郡に派遣した。
使者は、戦乱が続く半島の南岸と西岸を苦労して進み、帯方郡の役所に到着した。
西暦247年、秋。
載斯と烏越は、休む間もなく、太守に面会を求めた。
「帯方郡太守王頎様、難升米に代わり、倭女王卑弥呼よりお願い申し上げます。
狗奴国は、大倭連合の仲裁に応じないばかりか、その後も侵略を続けています。
既に、近畿奴国南部と巴利国東部が占領され、其々の国の都にも迫っております。
もうこれ以上、時間の猶予は有りません。
更にこのままでは、二国以外の加盟国にも、侵略の手が伸びる恐れがあります。
特に、四国島の躬臣・姐奴・為吾・伊邪の諸国は、武力が手薄なのです。
又、聞いた話によりますと、どうやら呉から、武器の支援を受けているようです。
これ以上、新たな武器を手に入れられたら、とても太刀打ちできません。
もし、大倭連合が邪馬台連合に負けたら、倭の国全てが呉の附庸と成ります。
これを防ぐ為、武器の支援だけではなく、魏軍による援助も頂けないでしょうか。
何卒早急に、強力な援軍の派遣をお願い致します」
それを聞いた王頎は、瞬時に判断し、即時に決定した。
「難升米への詔書と黄橦と武器なのに、なぜ卑弥呼から返事が来るのか分からん。
こちらの都合で武力の支援が遅れたのが、大倭連合が困窮する原因だろう。
ついては、塞曹掾史の張政と、鉄騎兵の精鋭百名を派兵する。
大倭連合の兵と共に、邪馬台連合に攻め入り、狗奴国を急襲しろ。
卑弥弓呼と繋がっているなら、卑弥呼には何も話すんじゃない。
難升米だけではなく、天帯彦にもその事を十分理解させろ。
狗奴国さえ撃破すれば、邪馬台連合の同盟は、崩壊するだろう。
狗奴国を撃破した上で、奴国と巴利国の領土を取り返し、其々の国に返却せよ。
更に、邪馬台連合の加盟国の領土に攻め入り、全てを占領しろ。
奪った領土は、大倭連合の加盟国で分割すれば良かろう」
帯方太守の王頎は、塞曹掾史の張政に、精鋭百名の鉄騎兵を連れ対馬海峡を渡り、詔書と黄幢と武器を難升米に仮し、檄文を作り邪馬台攻略を鼓舞するよう、命じた。
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