第六章 援軍要請 ②篠山攻略

 狗奴国は、近畿奴国の丹波篠山を足掛かりに、丹波に侵攻する計画を立てていた。多芸志彦を大将軍として、刺肩別を先鋒に、諸進を後詰として進んで行った。


多芸志彦が、南丹を過ぎる頃、刺肩別を呼んだ。


「刺肩別よ若い時は怖くて当然だ。恥ずかしがることはない。将来を考えるからな。俺位の歳になると、何も怖い事が無くなるが。

 お前達若い者は、より良い社会を築く為に、人生を捧げるのだ」


「多芸志彦様、私にも怖い事は有りません。まだ経験が少なくて緊張していますが、怖いものではありません。ただ、どうやったら相手を倒すことが出来るのか、まだ、良く分からないので、興奮しているだけです」


 狗奴軍は山間地での戦いが苦手だった。侵攻は、時間をかけて慎重に進められた。狭い峠道に差し掛かると先ず火矢を放ち、焼けた木を除け乍ら通路を広げて行った。待ち伏せていた奴国軍も、是には堪らず撤退せざるを得なかった。


 狗奴国軍は、篠山盆地に到達した。

 近畿奴国は、篠山城を築き、以前住んでいた農民を奴隷にして、暮らしていた。


 ここでも、狗奴軍は水攻めの策を採った。篠山盆地の西端の川代渓谷を堰き止め、盆地を水浸しにする戦法だった。

 水攻めには多くの兵力を必要とした。盆地の要所要所に見張りを置く必要があり、相手方の妨害工作を防ぐ必要もあった。

 可能にしたのは狗奴軍の兵の数だった。今回の侵攻には五千の兵が従軍していた。加えて、連合国の越人が近畿奴国の東を攻めているので、奴国軍の戦力は分散され、福知山からの援軍が、篠山に来ることは出来なかった。


 篠山盆地に水が溜まるまで半年を要し、その間に篠山城の兵糧は無くなっていた。それから城が落ちるまでは、ひと月も掛からなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る