第五章 支援要請 ④掖邪狗等派遣

 狗奴国の狗古智卑狗は、多芸志彦に命じて、亀岡城の攻略を再開した。


 多芸志彦が、峠を越えて亀岡盆地に入ると、亀岡城はまるで湖の中に浮かぶ小島の様な景色だった。


 刺肩別を使者として派遣すると、匈奴の将軍ケソクは、降伏するしかなかった。


「刺肩別よ、勝ったと思うなよ。必ず取り返してやるからな!」


 ケソクは、丹波篠山と福知山の城に立ち寄りながら、豊岡の城へと帰って行った。


 当初は、近畿奴国が原因だったが、これ以降、大倭国と邪馬台国の戦争となった。


 

 難升米は、ひと月を掛けて大倭国に戻り、天帯彦と卑弥呼の下へ、参上した。


「申し訳ありません。力及ばず、狗奴国との和平を取りなす事が出来ませんでした。狗奴国は大連合の提案を断ったばかりか、邪馬台国として、本格的に近畿奴国を占領する方針を固めたようです。

 今後は、大倭国として、全面的に邪馬台国と交戦すべきだと思います。再度私が、魏の朝廷を訪問し、武力の支援を要請したいと思います」


「難升米は引き続き狗奴国と近畿奴国の交渉を担って貰わなくては困る。代わりに、伊都国から使者を選んで、その者を派遣することにしよう」


西暦243年、春。


 大倭国の倭王は、伊都国の伊声耆と掖邪狗等八人を魏の朝廷に派遣し、奴隷や贈答品を献上して、武力の支援を要請した。


 魏の皇帝は、大倭国の要求に理解を示した上、掖邪狗等を率善中郎将に任命した。

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