④掖邪狗等派遣
西暦243年、春。
邪馬台連合の盟主で、狗奴国王の卑弥弓呼は、多芸志彦に命じて、亀岡城の攻略を再開した。
多芸志彦が峠を越えて亀岡盆地に入ると、亀岡城はまるで、湖に浮かぶ小島の様な景色だった。
多芸志彦は再度、刺肩別を使者として亀岡城に派遣した。
「ケソク殿、邪馬台連合盟主の卑弥弓呼様は、大倭連合倭王の天帯彦様からの謝罪と弁償の勧告を、一蹴することに決定された。
近畿奴国の一方的な侵攻であり、狗奴国の迎撃と反攻は、正当である。
既に、兵糧も底を突いたであろう。貴様らに、万に一つも勝ち目はない。
諦めて投降し城を明け渡せば、命は助けてやろうと仰っている。有難く思え。
さあ、どうする?」
近畿奴国の将軍ケソクは、食料や武器の補給もなく、降伏するしかなかった。
「刺肩別よ、勝ったと思うなよ。必ず取り返してやるからな!」
ケソクは丹波篠山と福知山の城に立ち寄り、セモクやエコクに悪態を吐きながら、ジマクが待つ近畿奴国の都城、豊岡へと帰って行った。
当初は奴国と狗奴国の紛争が原因だったが、これ以降は、大倭連合と邪馬台連合の全面戦争となった。
難升米は、ひと月を掛けて筑紫の伊都国に戻った。
伊都国の祭祀殿で、倭女王の卑弥呼に報告した。
「卑弥呼様、卑弥弓呼様はかたくなです。度重なる近畿奴国の侵攻に、堪忍袋の緒が切れたと仰っていました。天帯彦様の謝罪と弁償の勧告にも、ご立腹でした」
「そうね、卑弥弓呼から受けた支援の依頼とは、随分懸け離れた物になったものね。残念だわ」
その後、伊都国の朝廷に倭王の天帯彦様の臨席を仰いで、最終結果を上奏した。
「申し訳ありません。力及ばず、狗奴国との和平を取りなす事が出来ませんでした。狗奴国は大倭連合の提案を断ったばかりか、邪馬台連合として、本格的に近畿奴国を占領し、大倭連合と全面的に争う方針を固めたようです。
今後は、大倭連合としても、全面的に邪馬台連合と交戦すべきと考えます。
再度私が魏の朝廷を訪問し、武力の支援を要請したいと思います」
天帯彦は、事態の深刻さと緊急性を、今ひとつ理解出来ないでいた。
「何と生意気な。邪馬台連合なぞ、捻り潰して呉れるわ。
しかし難升米には、引き続き狗奴国と近畿奴国の交渉を担って貰わなくては困る。
代わりに伊都国から使者を選んで、その者を魏に派遣することにしよう」
西暦243年、夏。
大倭連合倭王の天帯彦は、新たに伊都国の文官となった伊声耆と、掖邪狗等七人の武官を魏の朝廷に派遣し、奴隷や贈答品を献上して、武力の支援を要請した。
大倭連合は、既に魏国の冊封に入っており、武力の支援を要請するのは当然だが、難升米と牛利以外の武官に役職を得ることも、重要な使命であった。
魏の皇帝は、大倭連合の要求に理解を示して、魏に朝貢した掖邪狗等七人の武官を率善中郎将に任命した。
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