第五章 支援要請 ③水攻め
多芸史彦は、諸進と刺肩別に命じた。
「大堰川を堰き止めて、水攻めにしろ」
此後、亀岡城攻めは長丁場となった。川が丹波高地を横切る辺りの崖を切り崩し、大堰川の堰き止めに成功した。水は時間を掛けて徐々に亀岡盆地を満たしていった。
まるでダムに出来た湖の様だったが、盆地は広かった。
三か月が経つ頃、亀岡城の周りにも堪り始めた。兵糧が尽きる頃でもあった。
城の周りを囲む狗奴国軍の陣に、騒ぎを聞きつけた伊都国の難升米がやって来た。
「多芸志彦殿困りましたな。形だけでも謝罪と弁償をすればよかったのに。大倭国の天帯彦様ばかりか卑弥呼様にも、弁明が出来なくなりましたぞ」
「そんな事を言われましても困りますな。元は近畿奴国が勝手に侵略したのですよ。それをさて置き、謝罪と弁償なぞ、出来る筈が無いでしょう」
倭女王・卑弥呼と狗奴国男王・卑弥呼弓が不和と言う話は、この時からである。
多芸志彦は、難升米を案内の上、奈良の都の宮城に参内した。
「卑弥呼弓様、今日は命を懸けて、説得に上がりました。
近畿奴国の、侵略と嘘には我慢出来ないでしょうが、匈奴とは、そんなものです。
まともに相手しては、何時まで経っても、戦争は終わりません。
大倭国と魏の支援を得て、奴国が勝手を出来ないようにするべきです。
そのためにも、大倭国と邪馬台国の、大連合を目指しましょう」
「難升米よ、余も随分と我慢したつもりだ。
ところが、奴国は性懲りもなく、わが領土を狙い続けている。
聞いた話では、匈奴自身は農耕が出来ないそうだ。
そんな輩だから、大人しく約束を守る筈が無い。
邪馬台国と大倭国の大連合と言うが、大連合を組む意味や利益が、考えられない」
難升米にいくら説得されようとも狗奴国は、卑弥呼弓を始めとして狗古智卑狗も、謝罪と弁償の話を聞く耳を持たなかった。
難升米は流石にあきらめて、すごすごと、九州に帰って行った。
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