第五章 支援要請 ②狗奴国反発

 狗奴国は、妥協案に不服だとして休戦を破棄し、三千もの兵を動員して峠を越え、近畿奴国領に攻め込み、亀岡城を包囲した。


 近畿奴国も丹波篠山と福知山の城から救援を出し、亀岡盆地の北西の八木の岡に、二千の兵が終結したが、直ぐには攻撃を仕掛けず、様子を窺っていた。


 是を見た狗奴国は千を亀岡城に残し、千を諸進が率いて盆地の東側の山裾を進み、千を刺肩別が率い西側の山裾を進んだ。

 八木の岡から見えない位置に待機し、夜になるのを待って、同時に秘かに近づき、一斉に火矢を放った。


 流石の近畿奴国軍もこれには驚き右往左往して逃げ惑った。火を消したかったが、川から距離があったのでそれもできずに、火の勢いは盛んになるばかりだった。

 近畿奴国軍は堪らずに、丹波篠山と福知山方面に分かれて、逃げ帰り始めた。


 そこですかさず、諸進隊は丹波篠山へ追い、刺肩別は福知山へ追い駆けた。


 逃げ道は、山間の狭い峠道である。匈奴は、山や林の中での戦いは得意であるが、暗い山道で火矢に追われては、如何ともし難かった。

 山の木を焦がす炎は渦を巻きながら勢いを強め、その明るさは真昼と見間違う程の明るさであった。


 丹波篠山へ逃げる匈奴は、天引峠を越えると火矢を打ち返してきたので、諸進隊はそれ以上追うことが出来なくなった。仕方なく百程を其処に残し亀岡へ引き返した。


 福知山へ逃げる匈奴は足が速くて、刺肩別隊は振り切られ、京丹波を過ぎた辺りで見失ったので、百程を残して亀岡に戻った。


 亀岡に戻った諸進と刺肩別は、城を囲んでいた部隊と合流し攻略を始めた。先ず、亀岡城の将軍ケソクとの城明け渡しの交渉に、刺肩別を使者とした。


 「ケソク殿、二度に亘る近畿奴国の侵略に対し反撃せざるを得なかったが、これに対して謝罪と弁償を求められるとは承服しかねる。城を明け渡すなら命は助けよう。

如何されるか?」


 ケソクは、即刻これを断った。


「笑止千万、受けて立つ!」


 そのため、狗奴国軍は本格的な攻撃に踏み切った。縦も横も四百メートルの城を、四方から囲み、一斉に火矢を射続けた。


 倭人の城と違い、匈奴の城は、材木だけでは出来てはいなかった。城壁も家屋も、石を積み上げ、泥を粘着剤として組み立てられていた。狗奴国軍が火矢を放っても、燃え上がることはなく、攻略方法を考え直す必要があった。


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