第四章 狗奴国逆襲 ③奴国との対談

 難升米は、多芸志彦を伴って亀岡城に入り、ジマクに面会し自戒を求めた。


「ジマク殿、狗奴国の卑弥弓呼様の名代として、多芸志彦殿をお連れした。

 今迄の因縁は水に流し、将来の和平について、腹を割って話をしようじゃないか」


 ジマクは筑後奴国の文官だが大倭国連合のキーマンでもあり、近畿奴国と狗奴国の交渉を仲介する為、近畿へ派遣されたものであった。

 難升米とは互いに、知り過ぎる程の間柄だったが、激しく反論した。


「難升米殿、遠路遙々ご苦労な事です。今回の出兵は、先の交戦で痛めつけられた、お返しに過ぎません。それなのに、千人もの兵の反撃は多過ぎはしませんか。

 そもそも、難升米殿はどちらの味方ですか」


 難升米は、出来るだけ声を抑えて、説得に努めた。


「ジマク殿、私はどちらの味方でもない。近畿奴国と狗奴国の仲裁の労をとる事しか考えていない。

 戦争を止めて、共存共栄の道を探ろう。

 可能ならば、大倭国と邪馬台国の大連合を組みたいと思っている。

 弱肉強食の世界なら、何時まで経っても平穏な毎日は望むべくもない。

 各国が勝手にやるならば、小さな連合さえ、組む意味はないのだから」


 ジマクは、理解できずに、更に反論した。


「そもそも、大連合を組む必要がありますか。大倭国としては、邪馬台国を侵略して併呑する方が、大倭国の為ではないでしょうか?」


 難升米は、小さな戦争の先にある大きな危険について、更に諭した。


「そんなことをしたら、邪馬台国は南の呉と組むかもしれない。

 そうなったら、魏と呉の、まさに代理戦争になりかねない。

 お前は、どうやって責任を取れるのか」


 ジマクは、そこで憤慨し、話を打ち切った。


「このまま話を続けても、平行線の儘だ。交渉は決裂だ。

 福岡に戻り、大倭国の倭王・天帯彦様に、判断を仰ぐ事にしよう」


 ジマクは、取敢えずの休戦の延長に合意した上で、筑後に帰って行った。



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