第三章 奴国侵入 ③狗奴国勝利

 京都城では、多芸志彦が待っていた。


「諸進も刺肩別も、ご苦労であった。今回、攻め入った奴国兵はどの位いたのだ?」


 諸進が、答えた。 


「捕虜が百で、死人が三百です。逃げた者が百位ですから、全部で五百位は居たようです」


「最初にしては多い数だな。邪馬壹国から買ったあの連弩が無ければ危なかったな」


 諸進が、聞いた。


「一体、奴国軍はどれ位いるのですか、筑後奴国からも援軍が来ているようですが」


 多芸志彦は、答えた。


「邪馬壹国出身の卑弥呼様が、大倭国の倭女王として共立されたから、こちらにも、大倭国軍の支援が来る可能性はある。しかし、すぐには間に合わない。

 今回ばかりは、狗奴軍と奴国連合との、総力戦になるかも知れないな」


 刺肩別が提案した。


「そうなると、厄介ですね。いっそこちらから、先手必勝で攻め入りますか?」


 多芸志彦が、応えた。


「卑弥弓呼様も狗古智卑狗様も、邪馬壹国や伊都国や不弥国とは、戦をしたくないとお考えだ。一時的に奴国に勝っても、争いは無くならないし、戦争はすべきでないと思われている。真に立派なお考えだ」


 諸進が、聞いた。


「それでも、掛かる火の粉は、振り払わねばなりません。一層の事、呉に武力支援を頼んだらどうでしょうか」


「呉は、大倭国が朝貢した魏と、争っている。呉に頼むのは、却って難しいだろう」


 諸進は、更に聞いた。


「もしかしたら、大倭国は魏に援軍を頼むかもしれません。若しそんな事になれば、事態は更に大変になりますよ」


 多芸志彦は、唸った。


「俺の一存では決められない。狗古智卑狗様に伺いを立てる事にしよう」


 多芸志彦は急ぎ、奈良の狗奴国の都、纏向の軽境原宮へと旅立った。

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