もはや珍プレー

 この最大イベント、麻衣ではなく啓介が対応したことで、介護の大変さを最大限に理解してもらえる事となった。

 富士子ちゃんの世話は、麻衣が基本的に見ていた。二階から呼ぶ声が聞こえた時、啓介がいても先に動いてくれる事はなかった。手伝おうという気持ちはあるけど、麻衣が動いてから後ろからついてくる感じ。だから、麻衣としては内心イラつくこともあった。でも、このイベントで一人でする介護は大変なんだと、こんなにも話が通じず、やっかいなんだと理解してもらえた。

今までは、日々の報告をしても

「大変だったね。ママお疲れ様」

と、キッチンの洗い物や洗濯干し等の家事はやってくれてたけれど、【介護】に関しては、どこか他人事のような返事しかなかった。

他人事として捉えてない事もわかってたし、労ってくれてるからこそ家事も率先して動いてくれていたのもわかっていた。麻衣自身、どうやって介護をやっていけばいいのかも手探りだったから、どう理解してほしいとか説明が難しく、モヤモヤしていた。

 このトイレイベントから、啓介も率先して介護に動いてくれるようになった。普段のオムツ替えも

「あれを経験したら、ちょっとやそっとじゃ動じないね」

と余裕。


 これまで家の中では、布パンツ使ってたけど、完全紙パンツに変更する。


紙パンツに変更したら・・・


朝、起こしに行くとパンツを履いていない。

ノーパンのまま椅子に座っていた。床をみると紙パンツが引きちぎられていた。

「富士子ちゃん、パンツ履いてないじゃん!ちゃんと履こうね」

と紙パンツを履かせようとすると

「こんなもの!」

と紙パンツを床に投げ捨てた。

「もうこの部屋出ていくから!」

とノーパンのまま歩いて行こうとする。

いや、どこからつっこめば!

この家出ていくじゃなくて、この部屋なのね!とか、ノーパンなのねとか!

もう珍プレーでしかない。


ここから十日ほど、毎朝起こしに行くとノーパンで部屋にいた。お漏らししないかヒヤヒヤ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る