璃杏の愛車と有栖の愛車

「バイクの免許は16になってすぐ取ったよ。どうしてもインパルスに、学生の内に乗りたかったから。」

 璃杏は*東京リベンジャーズ*が好きだった。そこで一押しのキャラクターが乗っていたのがインパルス。愛車が全く同じものかは判別できなかったが、これの為にお金を貯めていた。絶対に自分のお金で買いたかった。アルバイトをしすぎて1つ単位を落としたが。

 キャラクターの守護があるのか、一度も事故にあったことはない。

「恰好いいな。俺は原付にちょっとだけ乗っていたぞ。」

 本当にちょっと。かつて、大学に通ってみていた頃。事故って破壊し、処分したとは言わなかった。


「有栖のアレはどうしたの?自分で買ったの?」

 璃杏は眉を寄せる。想像できない、という顔だ。

「10年ほど前、住んでいたアパートのお隣さんが引っ越すときに貰った(押し付けられた)ママチャリを愛情持って使わせて頂いているだけだ。」

 有栖は自転車に、というかモノにあまりこだわりがなく、ひとつのモノを大事に大事に使うタイプだった。髪を結っている木の簪はいつから使っているか分からない。


 天根家の買い出しは有栖がママチャリを台車として押しながら璃杏と歩くスタイルだ。米や大根、キャベツを買いたいときにはママチャリが活躍する。


 璃杏は今や近所の駄菓子屋に行くときしかバイクに乗ることはない。だが、元々「買うことが目標」の節があったため気にしていない。有栖が、自分と同じように事故にあわないようにとバイクから遠ざけていることは、知らない。


 ちなみに、有栖はひとりでに電柱に突っ込んでしまっただけである。

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