有栖の吸血歴

「私以外の人から、血貰ったことあるの?」

 朝。有栖がぬいぐるみを抱きしめて寝ていたのが気に入らなかった私は、ちょっと意地悪を行ってみることにした。私のぬいぐるみを勝手に抱き枕にしたのは許せない。頬を膨らませ、目線を逸らしながら聞いた。

「ない。」

 不機嫌な様子さえ可愛いと思っている有栖は、とても静かに答えた。洗濯物を畳みながら話し始めた。

「俺に、邪血とっての吸血は、死ぬ相手を選ぶことと同義だ。」

 これだけ、答えた。

「1000年生きて、お前だけだよ、璃杏。」

 顔を両手で包まれ、目を合わせられる。すっかり毒気を抜かれてしまった。問題のバナナの抱き枕を抱える。

「怒ってごめんね!」

「怒っていたのか。気づかなかったな。」

 バナナに八つ当たりするが、何も返ってこなかった。

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