白雪さんのお仕事
「吸血鬼は世界中に1000人ほど確認されています。同家系の中からぽつりぽつり生まれてくることが多いですね。」
学校帰りに白雪さんが車で駅まで迎えに来てくれた。茨が、白雪さんの職業は知っておくべきだと言ってくれ、この話題になった。
「有栖は吸血鬼の伝承が残る家から、俺と白雪さんは同じ一般の家から生まれた。両親は何も知らない普通の人間さ。」
ほら、とスマートフォンに保存された写真を見せられる。白黒の写真だった。
「ええ。とすると、吸血鬼も人間と同じように戸籍があります。そして、同じように病院にかかり、健康診断だってする。免許だってね。それらで生まれてしまうひずみを解消するのが我々の主な仕事です。」
「凄い大事なんですね。」
警察官と政治家を合体させた感じだろうか。確かに、今日の白雪さんは制服のような、軍服のような服を着ている。
「基本、吸血鬼の特性は病気の一種として扱われます。血液型が当てはまらない、灰になって消える、ですね。医療関係者や警察組織では、こう教えられているはずです。」
「知ってる人は知ってるんですね。なんで広まっていないんですか?」
「信じてる奴が少ないからだ。実際に吸血鬼だと分かって関わることなんてほとんどない。」
茨は干し梅をつまんでいる。一つくれた。
「そういうことです。璃杏さんも何か困ったことがあれば相談してくださいね。」
ここで、マンションへつけてくれた。何故か有栖が立っている。
「ありがとうございました。茨、また明日。」
「おう。」
「ただいまー!」
「おかえり。学校はどうだったかい?」
「普通。」
「はは、そうかそうか。」
「白雪さん、なんか有栖に頼まれたのか?」
干し梅のチャックを閉めて鞄へ突っ込む。
「そうなんですよ。茨くんの協力も不可欠でして。」
有栖から璃杏が逃げたいと思ったら、すぐにでも手を貸そうと思っていた。だが、その機会はきっとない。互いか互いへ、沈み込んでいるのを感じてしまった。
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