正月ごはん

「有栖、七草がゆ食べたい。」

 野菜コーナーで思い出した。スーパーマーケットに入って2分。

「作るか。」

 パックに入った七草を見つめ、かごに入れる。

 有栖はお料理が上手だ。今までコンビニごはんこそ至高だと思っていたけど、有栖の方が美味しい。

 おせち料理は食べたことがない。でも、この時期になるとレトルトの商品が売っているので、七草がゆは好きだった。

「数の子って何?」

 魚コーナーで立ち止まる。金色のつやつやした物体に目を奪われた。

「にしんの卵だな。食べるか?結構美味い。」

「食べる。」

 醤油と塩、どっちも買っておこうとカゴに追加。ちょっと安くなっていた。

「璃杏はおせち、食べたこと無いのか?」

「うん。」

 素直にうなずく。だって、おせちって贅沢なものだから。

「じゃあ海老も買おう。蟹も買おう。酢だこまだ売ってるか?」

 有栖は急に機敏に動き出した。アレルギーは大丈夫か確認してくる。うなずけば、売り場で一番高いやつにした、と自慢げに掲げてきた。


 有栖は、私に優しくしてくれる。私に攻撃してこない。だったらいい人。好きな人。ずっと一緒にいたいな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る