第42話 ある少女の独白
──この世界は不平等で、決して優しくはない。
小さく貧乏な村に住み、薄手のボロ布で寒さを凌ぎ、食料も限られていてお腹がいっぱいになることはない。そんなギリギリの毎日を送りながら、私はよくそんなことを考えていた。
だってそうじゃないか。生まれた瞬間に立場が、そして大抵の生き方が決まる。受けられる教育だって違えば、寒さを凌ぐ術も、食べ物も、魔物から身を守る方法だって違ってくる。
いくら努力したって、決して覆せないものがそこにはあるのだ。
……近所の気の良いおじさんが、妹のように可愛がっていた子が、私のお父さんが死んだのだって、間違いなく町ではなく村だから起こってしまったこと。
そんな不平等な状況をどうにかしたくて、私は16歳になってすぐに村を出ることを決めた。
村のみんなのことは大好きだし、正直離れたくはなかったけど、誰かが、いや私が行動を起こさなければ、きっと一生このままだと思ったから。
「町でも頑張るんだよ」
村を出る時に送り出してくれた、大好きなお母さんの言葉。
そんなお母さんが、村のみんなが少しでも生きやすくなるように頑張ろう。
そう心に誓いながら、私は近くの大きな町を目指した。
なけなしのお金と、唯一の武器であるとびっきりの笑顔を持って──
……その結果がこれって、さすがにあんまりじゃない?
手足を縛られ、身動きが取れない状況で、私は膝を抱えながらそう思った。
真っ暗で何も見えない空間。聞こえるのは幾人かのすすり泣く声と、私たちを運ぶ馬車の音だけ。
これから私がどうなるか。そんなことは捕まった瞬間に理解した。
奴隷紋を刻まれる。奴隷にされる。そして名もしれない誰かに買われる。その先がどうなるかは……いやだ。考えたくもない。
……本当に不平等な世界。
私は改めてそう思う。
きっともうお母さんたちに会うことも、みんなが生きやすくなるように頑張ることもできない。
そればかりか、かなりの確率で、考えたくもないことをさせられて、苦しみながら一生を終えることになるんだ。
なら1つだけ。せめてこれくらいは──
……どうか少しでもまともな人に買ってもらえますように。
深い諦念と冷め切ってしまった心の中で、私は切にそう願った。
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シリアス調なプロローグですが、2章以降のストーリー自体は底抜けに明るいものになりますので、ご安心ください。
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