第10話
『皆見た!?昨日の私のコンボ!めちゃくちゃカッコよくなかった!?』
【あそこだけプロだった】
【あのラウンドだけ立ち回り神だったよね】
【あれだけ切り抜いてXにでもあげたら?】
『うんうんそうだよね……ってだけってなにさ!!もっと他の試合もカッコよかったでしょ!!!』
日曜の夜。
授業の予習をしながら星宮ハルカの雑談配信を聞いていた。
雑談の内容は主に昨日の配信について。凹んでいたことには一切触れずにひたすらドヤ顔で最後の試合の話をしていた。
(あんだけ凹んでたのに引きずらないのは才能だよな)
少ない視聴者と和気あいあいとしながら今後の予定についても話していた。
『とりあえずねー…水曜と土曜にエボ6は配信すると思う!日曜は雑談だし……後は学校で忙しいからさ!』
『ちなみに!今度の土曜配信では皆と対戦しようかなって!ボコボコにしてやるから覚悟しとけよ!!』
【ん?聞き間違いかな?】
【未来では受動態の使い方が変わってるんですね】
『あーーーー怒らせた!怒らせちゃった!!』
『女の子に負けたって称号を掲げて今後のエボ6人生楽しむといいさ!』
その後も楽しそうに雑談は続き、俺の予習も捗ったのだった。
「おはよ………はぅ……」
「おはようございます」
月曜日。
遅刻ギリギリの時間になって西園寺さんは教室に現れた。
だけど俺達が何かを話すということはしなかった。学校ではただのお隣さん。という関係性でしかないからだ。
すぐに小田先生がやってきて、ホームルームが始まる。話半分に聞き流そうとしていると…
チョンチョン
急に隣から腕をつつかれたかと思えば、西園寺さんが破ったノートのページを渡してきた。
何の用かと確認しようとすると、ページの左上に「土曜日の配信、見てくれましたか?」と書かれていた。
(なるほどね)
俺は西園寺さんの意図を理解し、ページを受け取り、返事を書き、返す。
「いえ、忙しかったので」
それを見た西園寺さんは何故だかニヤニヤしだして返事を書き出し、渡してくる。
そうですか。残念です
何がですか?
教えてもらったコンボで勝っちゃいました
よかったですね
もうホントに嬉しくて、感謝したかったんです
西園寺さんの練習の成果ですよ
いえ、草薙くんのおかげです
ですので、
渡されたページは急に文が途切れていた。書き忘れかと思って隣を見ようとすると……
「ありがとうございました」
西園寺さんに耳元でそう囁かれたのだった。
俺はその行為に心臓をバクバク鳴らしながらも返事をページに書いて渡した。
からかわないでください
すいません。つい
見られてたらどうするですか
私はかまいませんよ
俺は気にするんですよ
友達なら普通の事じゃないですか?
「え……」
「え?」
「友達なら」という返事に思わず声を出してしまい、それと同時に隣からも声が聞こえた。
隣を見てみると西園寺さんが慌てふためいてオロオロしていた。
「………ふっw」
俺はその様子に吹き出してしまい、それを見た西園寺さんは今度は不服そうに頬を膨らませていた。
(そっか……そうだな……)
そして俺はそんな西園寺さんを横目に見ながら返事を書いた。
友達でもしませんよ?
え?ホントに?
はい
西園寺さんはまたまた慌てふためき、何を書いたものかと葛藤していた。
今に思えばその時だったのだろう。
西園寺さんの野望を叶えるために全力を尽くそうと決めたのは。
それがコーチであり、ファンであり、友達である俺の役割なのだと、そう確信したのは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます