推しの配信者は隣の友人です

第11話

『むむむむ……』


「どうしました?」


『……飛んでよ』


「嫌ですよ」


『いいじゃん一回くらい!!カッコいいとこ披露させてよ!』


「負けたくないので嫌です」


『私は勝ちたいの!』




放課後、西園寺さんがコーチングの前に対戦したいと言うので付き合っているのだが…


『まぁ?飛ばないなら近づけないだろうし?この最強キックでね!』


「そっすねー」


確かにマウガの立ちCは強力だし、飛び道具を持たないリンでは難しいのだが…


「ほっ」


『うぇ!?まぐれでしょ!?』


立ちCを躱した後に前進しながら攻撃することで反撃をとる。いわゆる差し返しだ。


『ちょ……泣くよ!?』


「とんでもない脅しきたな」


それでも俺は手を止めることはなかった。

真面目にやると決めた以上、西園寺さんがいつかは直面する問題だからだ。



「というか」


『ん?』


一度対戦を終え、西園寺さんに気になっていたことを尋ねる。


「学校だと敬語ですよね?」


『あー……敬語の方がよかったですか?』


「いや全然」


『……ありがと』


スマホ越しに聞こえたその一言は俺の心臓を爆音で高鳴らせるには充分すぎた。


「ま、まぁ…そんな話はおいといて、当面の課題を設定しましょう」


『課題!!なんだかそれっぽい!』


「まずはメインメニューに戻ってもらって…アーケードモードってのがあると思うんです」


『はいはい』


「そのモードは色んなキャラ…例えばマウガのざっくりとしたストーリーを追いながらコンピューターと戦うモードです」


『え!?この人の事を知れちゃうの!?』


「そうです。しかも対戦も出来ます」


『お得!!』


「というわけでそのモードの最高レベルを一度も負けずにクリアしてください」


『……最高レベルを?』


「はい。最初はEasyから始めて、それをクリアしたらNormal。そしてHard。最後に最高難易度のEVOLUTIONです」


『難しそう……』


確かに初心者には難しい課題ではあるが、それでもいきなり対人戦をするよりはマシだ。


「というわけで、アーケードモードをクリアするための授業を今からします」


『授業って……なんだか先生みたいだね!』


「…とっととルームに戻ってきてください」


自分でも恥ずかしい言い回しをしたことに今さら後悔しつつ、このゲームの基礎を教えた。


「まずはA…□ボタンですね」


『これね、シュッシュッ』


「それが基本的に一番速くて、一番ダメージが低いです。ジャブみたいなもんだと思ってください」

「そして△ボタン。なんどもコンボ練習したので分かると思いますが、そこそこ速くてそこそこ強いです」


『真ん中ってことだね!フンッフンッ』


「んで、◯ボタン。遅くて強いです」


『シンプル!オラッ…オラッ』


「で、教えてなかった✕ボタン。押してみてください」


『✕?えっと……なにしてるの?』


「キャラごとの特徴に合わせた技が出ます」


『ほぇー?』


「マウガの場合だとそのまま押せば相手を掴みます」


『おぉ!』


「掴んだ後は色々出来るんですが……」


『おぉ?』


「……まぁここら辺はEasyをクリア出来たら教えますよ」


『お願いします!』



一通りの説明を終え、今度は試合形式で動かす。


「じゃあさっきの話の応用といきましょうか。□は相手が近い時。△はコンボ。◯は相手を近づけたくない時に押しましょう」


『おっけー!』







『思ってたよりむずかしい……』


「まぁこの辺は慣れですね。そのためのアーケードモードです」


『なるほど!つまり全難易度をクリアする頃には完璧ってことだね!』


「そういうことです………多分」


『よっしゃあ頑張るぞー!……多分?』


本当は今作からの要素の連打するだけでコンボが出来るシステムもあるのだが…西園寺さん自身が「それじゃあバズらない!」と譲らなかった。


そのシステムに頼ると火力は下がるがマウガの場合元々が高いので対した問題はない。

という説明もしてみたが聞く耳をもたなかった。




その日はマウガ同士で少し対戦をしてからコーチングを終え、次の配信でアーケードモードをやるから見てて欲しいと頼まれたのだった。

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