第7話
「なぁ誠」
『んー?』
「もしさ」
『んー』
「もし恭華が実はVTuberですって言ってきたらどうする?」
『ないだろ』
「だからもしって話なんだよ」
西園寺さんとの対戦会が終わり、誠がバイトから帰ってきた後に対戦をしながら話をしていた。
『そだなー…特になんも変わんねぇかな』
「ほんとか?」
『別に今も雲の上の存在みたいなもんだし…』
「それもそっか」
『てかなんでマウガ?……まさか変な連係見つけたのか!?』
「いや……ちょっと未練がな」
誠と対戦を始めてからずっとマウガを使っている。だが何度やっても初心者に勧めるキャラではないという事実が分かるだけ。ハッキリ言って弱い。
『火力は流石なんだけどなぁ……ほい』
「んー…差し合いがなぁ……マジかそれに確定ないのかこのキャラ」
誠は俺が試行錯誤しているのを察してくれてか色んなキャラを使ってくれている。
俺とは違って器用な奴なのでどのキャラもそこそこ動かせる。
『でも初心者帯なら立ちC振ってるだけで勝てそうじゃね?』
「そりゃそうだろうけど見た目が終わってんだよ」
西園寺さんの要望は「勝ちたい」のではなく、マウガのカッコいいとこを「引き出したい」だと思っている。
俺達みたいなゲーマーとは視点が全く違う。
確かに唯一判定が強い立ちCをブンブンしながら飛んできたのを対空すればしばらくは勝てるだろうがそれではカッコ良くない。
「んーー……」
『……やけに真剣だな』
「そうか?」
『いつもなら弱キャラなんて~って諦めるのに』
「そんな薄情な奴だったか俺って」
『わりと』
「心外だな…でもそろそろ真面目にやるか」
『お、よっしゃ3先なー』
お互いにキャラを自分の持ちキャラに変え、真剣勝負を始めた。
俺はリン、誠はオニキスを選び対戦が始まる。
リンはスピードタイプのコンボキャラ。素早いステップに追撃可能投げ、3段階派生できる打撃に無敵技まで至れり尽くせりだ。
そしてなによりかわいい。
対するオニキスは通常技の性能が高く、C系統の技を中心に牽制をし、地上戦を嫌がって飛んだところを叩き落とす。所謂飛ばせて落とすキャラだ。
そしてなにより細身でイケメン。
「なんだよその技の判定バカが考えたのか?」
『これ?4C』
「下がりながら振っていい技じゃねぇだろ」
『いやソイツのステップと飛びも速すぎるだろ。体重ないんか?』
「かわいいから当然だろ」
『一昔前のアイドルかよ』
「ふぅ…勝った勝ったー」
『マジかぁ……今のミスんなきゃなぁ…』
結果は3対1で俺の勝ちだった。
「いやでもオニキス強いな……普通にキモいわ」
『やめろよ?俺のキャラだからな?』
「分かってる分かってるって」
俺達の暗黙の了解で同キャラはなるべく使わないということにしてある。
オニキスは目茶苦茶面白そうなんだが仕方ない……
「明日は?バイト?」
『もち…めんどくせぇけど金欲しいからな』
「それはそうだなー」
誠は飲食店でバイトをしている。バイト終わりに対戦するといつも「疲れた~」と愚痴をこぼしている。
『お前はバイトしないのか?』
「あー…いや実は始めようかなって」
『マジ?うちくる?』
「いややめとく。他に良いとこ探してあるからさ」
『俺にも紹介してくれよ~』
「そのうちな~」
ピロリン
その後もしばらく対戦は続き、熱中しすぎたせいかスマホに通知がきていたことに気づかず、寝ようとした深夜の1時頃にやっと既読をつけたのだった。
みらい『明日は土曜日でした!月曜日に会いま
しょう!』
(……律儀な人だな)
何か返そうかと思ったがすでに布団の中だったので返す前にそのまま眠りについたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます