第4話

「はいじゃあ今日もお疲れー部活生は励めよー帰宅部はとっとと帰れー」


いつもの適当な小田先生のホームルームも終わり、俺と誠は同時に立ち上がった。


「よし帰ろう!」


「そうだな……っと!?」


「ちょ!?」


いつも通りに帰ろうとすると今は隣に人がいることを完全に忘れており、危うく鞄をぶつけてしまうところだった。


「す、すいません!!」


「あ、いや…ちょっと驚いただけで…」


「すんませんコイツほんとバカなんすよ……よく言っときますんで…」


「ぅぐ………ホントにすいません…」


「……ふふw本当に仲が良いんですね」


西園寺さんはそう微笑みつつ、あることを尋ねようとしてきた。


「あの…昼休みの話なんですけど――


「おーい未来ちゃん!!カラオケ行こ!カラオケ!」


話をしようとするとまたまた恭華が遮ってきた。


「カラオケ…ですか?」


「そう!歓迎会的な?ようこそ我がクラスに!的な!!」


恭華の後ろの方をみるとクラスの陽キャ女子達がふたりが来るのを待っている様子だった。


「……いいですね!行きたいです!」


「ほんと!?さっすが話が分かるね!」


「あ、でも……」


西園寺さんは俺の方を見て、何かを言いたそうにしていた。


「え?慎二に何か用事でもあるの?」


「い、いえ!用事というほどでは……」


「だったら明日でもよくない?慎二もいいよね?」


「お、おう…俺は別に……」


「はい!そうと決まればレッツラゴー!」


そのまま嵐のようなテンションの恭華に西園寺さんを連れ去られてしまうのだった。


「……なんなんだろうな話って」







「ん?…っていねぇし!!」


ついさっきまでいたくせにいつの間にか消えてやがった。


「あの野郎!容赦しねぇからな!」


俺も急いで教室を飛び出し、駅のホームへと向かうのだった。






『おい!見えるわけねぇだろ!やめ…補正切るんじゃねぇ!』


「なんだよやめろって言ったりやめんなって言ったり忙しい奴だな」


『初日にしていい連係じゃねぇだろ!もっと遊ばせろよ!』


「いやー2からのリン使いだったからさぁ…自然とねぇ…」


『リンは3からだしそもそも5には参戦すらしてねぇんだよ!』


「完璧な説明サンクス。んじゃおわーりっ」


『はーーーーー??なんでコマ投げもってんだよ???』


「……かわいいから?」


『はいキレた。もうキレました荒らします』



家に帰り、1時間のトレモの後、いつものように誠と通話しながら対戦をしていた。

俺はβ版で使っていたキャラが見事に弱体化を食らったので早々に見切りをつけ、違うキャラに鞍替えしたのだった。



『結局ゴリラはどうなったん?終わり?』


「んー…近距離は変わんないと思うけど中距離がなぁ……牽制は軒並み弱くなったし、移動投げの発生は遅いし低姿勢属性取られたし…」


『むしろあんなので飛び道具避けられてた方が不思議でしょうがねぇわ。あ』


「あ、じゃねぇよ!どこに技置いてんだ!」


『当たると思って~』


「ふざけん…は?おい!減りすぎだって!」


『そりゃカウンター始動だし?』


「荒らしキャラかよコイツ!」


『ゴリラ使いに言われたかないわ』



ピロリン


「ん?」


そんなこんなで誠と盛り上がっているとスマホに通知がきた。

対戦しながら通知の相手を確認すると…



みらい『こんばんは』



「はぁ!!?」


『うぉビックリしたぁ……なんだ?』


通知音の正体に驚き、反射的にデカい声を出してしまった。


『どした?Gでも出たか?』


「あ、いや…その……」


ピロリン


「!?」


誠に事情を説明しようとすると再び通知が届いた。


みらい『恭華さんからクラスのグループに招待     

    してもらって、そこか―――』



通知から読み取れる内容からして経路は理解できた。だが理由が見当たらない。



『おいどしたー?生きてるかー?』


「すまん母ちゃんからだ!悪いけど今日は終わりな!」


『へーい。んじゃまた明日なー』



おもわず誠に嘘をついて通話を切った。

そして俺は次なる通知を待つためにスマホとにらめっこしていたのだが……



(こねぇ……!)


5分待ったが通知がくる気配がない。


(まさかさっきの文に用件は全部書いてあったのか?てことは早めに返さないとまずいよな?)


そう思い、恐る恐るアプリを開いてトーク履歴の一番上を見る。

そこには「みらい」という名前のかわいい猫のアイコンが表示されていた。


(ここで決めなきゃ男が廃るよな……よな?)


一旦冷静になり、とりあえず誠に助けを求めようと震える指で2番目に表示されている履歴を押そうとする。


しかし……



誠『すまん。そういや俺明日はバイトだわ』



「あ…」


たまたま誠から通知が届き、順番が入れ替わる。だが俺の指は止まることを知らず、そのまま2番目をタップするのだった。



みらい『こんばんは』

みらい『恭華さんからクラスのグループに招待     

    してもらってそこから追加しました。

    よろしくおねがいします』



いざ蓋を開けてみれば内容は至ってシンプルな挨拶だった。 


(ビビったぁ……まぁ普通に返しとくか)



 既読『こちらこそよろしくおねがいします』


(はっや!?てか開きっぱ!?)


返信するだけして風呂に入ろうと思っていたのだが、即既読のせいでおちおち風呂にも行けなくなってしまった。



みらい『実は草薙さんに相談したいことがある

    んです』

みらい『明日の放課後、教室に残って貰えます   

    か?』



俺の返信の後、西園寺さんからすぐにそう返ってきた。



      既読『今では駄目なんですか?』


(やっぱ開きっぱだよなぁ……こえぇ…)


みらい『こういうのは面と向かってお話するべ

    きだと思っていますので』



(面と向かって……?)


西園寺さんからの相談の内容を脳をフル回転させて考える。


(なんだ………?いや……流石に………)


面と向かってといえば思春期の脳では1つしか思い浮かばない。なんとか他のことを考えようとするもどうしてもそこにしか辿り着かない。


(……まぁでもとりあえず)



             『分かりました』



(よし見てないな!)


無難な返事をし、既読がつかないことを確認すると、そのまま鼻唄を歌いながら風呂に向かうのだった。

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