第三章

第35話:桜井さんのサポート役を引き受けて一ヶ月半が過ぎた頃

 桜井さん(スズハちゃん)のサポート役を引き受けてから一ヶ月半程が経過した。


 サポート役を引き受けてからは週に一回はレンタルオフィスを借りて、そこで桜井さんとミーティングをするようにしていた。そして今日はそのミーティングの日だった。


「あ、お疲れさまです! 友瀬さん!」

「はい、お疲れさまです、桜井さん」


 俺は一足先にレンタルオフィスに来てそこで待機をしていると、それから程なくして桜井さんもレンタルオフィスにやって来てくれた。せっかくなので俺はレンタルオフィスにやって来た桜井さんの姿を眺めていってみた。


 今日の桜井さんのコーディネートは大人っぽいニットのワンピース姿に可愛らしい丸メガネを身に着けていて全体的にとてもオシャレなコーディネート姿だった。普段は眼鏡をかけてない桜井さんなんだけど、こういう可愛らしい丸眼鏡もとても似合っていて素敵だなと感じた。


(うん、やっぱりこの子って物凄くオシャレな女の子なんだよなぁ)


 俺は桜井さんの姿を眺めながら心の中でそんな事を思っていっていた。まぁでもそういうのを口に出してしまうとセクハラになってしまうご時世なので実際に口に出す事なんて事は絶対にしないけどさ。


「……うん? どうかしましたか、友瀬さん?」

「……えっ? あぁいや、何でもないですよ、あはは」


 でもそんな事を思いながら桜井さんの姿をじっと眺めていると、桜井さんは不思議そうな顔で首をかしげながら俺にそう尋ねてきた。俺は慌てながら何でもないと言って誤魔化していった。


 という事で今日もこれから桜井さん(スズハちゃん)とのミーティングが始まっていく事になった。


◇◇◇◇


 桜井さんのサポート役を引き受けてからこの一ヶ月半の間に、俺は前にも言ったように三つのやりたい事を順次進めていっていた。


 まず一つ目はトイッターで倉瀬スズハちゃんの公式アカウントの設立を行っていった。そしてそれに伴い、スズハちゃんが公式スタッフを雇ったという事を視聴者やファンに認知して貰えるように頑張っていった。


 まぁでも認知のさせ方については、桜井さん(スズハちゃん)にこの一ヶ月半もの間に配信やトイッターとかで公式スタッフを雇った旨の報告を逐一して貰っていたので、視聴者側からもスズハちゃんに公式スタッフが付いているというのはすぐに浸透していってくれた。


 そしてそのおかげもあってか、あの日以降スズハちゃんに対して目に余るような酷い荒らし活動は今の所は無くなっていた。


 まぁでも、またあのような酷い荒らし行為が始まった場合には、いつでも懇意にしている法律事務所に依頼する準備は出来ているので何ら問題はない。個人勢の弱小新人Vチューバーだと舐めている荒らし相手に容赦するつもりなんて一切ないからな。


 そして桜井さんにも酷い荒らしは全部無視してくれて構わないと伝えているので、今後の荒らし対策に関してはこれでバッチリだ。ふふん、スズハちゃんの最古参ファン舐めんなよ!


 という事で今の所はトイッターの運営は何の問題も無く行えており、また荒らし対策も今の所はバッチリとなっている。


 続いて二つ目としてショートの切り抜き動画の作成を順次行っていった。切り抜く動画としては、配信中にスズハちゃんの可愛らしさが全開のぽわぽわっとしたド天然トークを主に切り抜いて投稿していっていた。


 でも世間的にはVチューバーに全然興味がないという人も多い事はちゃんと理解している。だからVチューバーの雑談配信の切り抜きショート動画を見るつもりはないという人も沢山いるはずだ。


 だから俺はスズハちゃんの切り抜き動画は雑談配信の切り抜きだけではなく、スズハちゃんの歌ってみた動画の切り抜きショート動画も順次投稿をしておいた。


 これによってVチューバーの雑談に興味がないという人でも歌系の動画なら少し聞いてみようかなって思う人も中にはいるはずなので、そういう人達に向けて歌ってみた系のショート動画も作成していった。


 そしてこの一ヶ月半の間にそれらのショート動画を沢山投稿をしてきた甲斐もあり、スズハちゃんのチャンネルの動画再生数も登録者数も少しずつだけど着実に増え出していってくれていた。


 ショート動画の再生回数に関しては今の所はどれも平均で4~5万再生はしてくれており、個人勢の新人Vチューバーとしてはかなり頑張ってる数字が取れていた。


 そして登録者数に関してはなんと俺が想像していた以上に伸びてくれており、つい先日にスズハちゃんのチャンネル登録者数は1.5万人を突破してくれた。


 俺が桜井さんのサポート役を引き受ける前のチャンネル登録者数は5千人程度だったので、つまりこの一ヶ月半でチャンネル登録者数を1万人近くも増やせたという事だ。


 いやでもまぁ……もしかしたら人によっては「えっ?? そんだけウーチューブ活動やっててまだ登録者数1.5万人とか少なすぎるだろww 雑魚過ぎ乙ww」って嘲笑う人もいるかもしれないけど、でもそれは……。


(でもそれは……ウーチューブ活動を一度もした事の無い人が言うただの戯言だからな)


 何のコネもない普通の人がウーチューブを初めてチャンネル登録者数を1万人まで増やすという事がどれほど困難な事なのかわかってないからそんな戯言を言えるんだ。


 何故ならチャンネル登録者数が1万人を超えているウーチューブチャンネルというのはたったの上位3%しか存在していないんだからな。それだけチャンネル登録者数を増やすというのはとても難しい事なんだ。


 だからこそチャンネル登録者数を増やしたくても全然増やせなくてメンタルがどんどん崩壊していったウーチューバーを今までに何人も見てきたし、中にはお金でチャンネル登録者を購入するという不正をしていたウーチューバーも何人も見かけてきた。


 もちろんそんな不正をした所で運営側にはすぐにバレてしまうし、最悪の場合はチャンネル自体がbanされてしまう可能性もあるので絶対にやってはいけない事だ。もちろん俺だってそんな不正は今まで一度もやった事はないからな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る