第30話:雪丸Pについて
【如月サク:作曲P一覧】
・雪丸P
2010年代からヌコヌコ動画にて投稿を開始した如月サクの作曲P。明るくてポップな曲調から暗くてダークな曲調まで幅広いジャンルの曲を投稿しており、デビュー作の「おはよう、僕らのシンデレラ」は現時点で500万回再生を突破している。
動画投稿を始めた最初期には動画のサムネやMVも全てを自作で行っていたが、しばらくしてからは人気イラストレーターの香月氏が動画のサムネとMV作成を担当する事になる。
デビュー作の「おはよう、僕らのシンデレラ」は如月サクの可愛らしさをふんだんに詰め込んだ明るくポップな曲調の歌となっており、投稿してから瞬く間に再生数が伸びてたったの数ヶ月で殿堂入り(10万再生)を果たす。
その後も如月サクらしい可愛くて明るい曲を投稿し続けていったが、しばらく経つとそんな可愛らしい曲調から一転して、暗くて悲壮感の漂う曲調の「この世界に希望なんてない」を投稿する。
しかし歌詞の内容としては悲壮感の漂う曲ではなく、むしろ……。
“希望なんて何もないと感じるだろうし、きっと今も漠然とした不安に苛まれて苦しみもがく毎日だと思う。そしてそれが辛くて毎日死にたいと願ってるかもしれない。でも、もしそう願っていたとしても僕は君に生きてほしいから……だから希望は無くても頑張って一緒に生きてみようよ”
というように、確かにこの曲は暗い作風ではあったが、それでもこの曲は“生きる事に辛くなっている人達”に向けた応援歌となっていた。
しかしこの曲は普段の明るくて可愛らしい如月サクのイメージからはまるっきり逆の曲調だったために、一部の如月サクファンから猛バッシングを浴びる事となった。さらには過激なアンチからは徹底的に叩かれてしまう要因にも繋がった。
以下、その当時のアンチコメントの抜粋。
―― 如月サクにこんなクソ暗い曲を歌わすな! 〇すぞ!
―― マジで不愉快。P活動辞めて消えて欲しい
―― こんな曲を歌わせられるサクの身にもなってくれ。キモい曲作ってないで早くタヒんでくれ
このような過激なコメントが原因となって同作者は一時的に休止状態へと追い込まれる事になり、再び活動再開するまでに数ヶ月を要する事になった。
しかしそれから数年後、この物議を醸しだした「この世界に希望なんてない」の歌詞が若者達を中心にして次第に共感が得られていくようになっていき、さらにSNS上で瞬く間にこの曲が拡散されていった事で爆発的な人気曲へと変貌を遂げていった。
そしてその後も同曲は沢山の歌手や芸能人にもカバーされていかれるようになり、今もなお若者達を中心にして広く親しまれている曲となっている。
そして現在の雪丸Pは再び活動休止中とはなっているが、それでも若い世代の人達からは莫大な人気を誇っており、今もなお復活を待ち望まれている声が一番多い作曲Pである。
(以上、如月サク:作曲Pウィキより抜粋)
◇◇◇◇
「……いや、実は今は仕事もだいぶ減って楽になってきたからさ、だから最近はまた曲作りを再開していってるんだ」
「……そう、それなら良かったわ。ふふ、それじゃあまた近い内にアンタの新曲が聞けるって事ね?」
「あぁ、まぁいつ完成するかはわかんないけど、でも必ず完成させるから楽しみにしといてくれたら嬉しいよ」
「えぇ、もちろんよ。だって私はアンタの最古参のファンなんだからね。だからいつまでも待ってるわよ」
「はは、本当にいつもありがとな。あ、そうだ、まだいつ完成するかは全然わかんないんだけどさ、でも新曲が完成したらまたいつものように香月にMVを作って貰いたいんだけど……これからもまたお願いできるか? 今回からはちゃんと正規の依頼手続きを踏ませて貰うし、ちゃんと適正な料金もしっかりと払うからさ。もちろん今までの分も合わせて支払うよ」
という事で俺は申し訳なさそうにしながらそんな事を言ってみたんだけど……でも香月は腕を組んで自身満々の笑みを浮かべながらこう返してきた。
「ふふ、何言ってんのよ? そんなのもちろん引き受けるに決まってるじゃないの。というか私以外にアンタの曲のMVを作らせる気なんてサラサラ無いわよ?」
「え、ま、マジで良いのか?」
「えぇ、そんなの当たりまえでしょ。それとアンタのMV作りは私の趣味でやってるだけの事だから報酬なんて別に要らないんだけど……まぁでもお互いに今はもう学生じゃなくて立派な社会人になった訳だし、これからはキッチリと契約を結ぶ事にしましょうか? ……まぁその方がお互いにトラブルとかも起きなくて良いだろうしね……はぁ……」
「え? あ、あぁ……」
そう言うと香月はため息をつきながらどんどんとしんどそうな表情に変わっていっていた。まぁやっぱりイラストレーターは個人事業主になるわけだから依頼主との金銭面のやり取りで色々と大変な目に遭ってきたんだろうなぁ……いやまぁ俺もクルスドライブの時にはそんなトラブルを死ぬほど味わってきたんだけどさ……。
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