第29話:いつメン達の頑張ってる話を聞く
「そ、それで? 他のメンバー達は皆元気でやってるの? 何かいつメン達の楽しいニュースとかはあったりしたか?」
「えぇ、もちろん、アンタ以外の皆は元気にやってるわよ。あとはそうね、楽しいニュースと言えば……あ、そうそう! そういえば次回のパリオリンピックの新種目に“ブレイクダンス”が選ばれたでしょ?」
「え? あぁ、うん、そういえばちょっと前にそんなニュースを見た気がするかな」
確か次回開催されるパリオリンピックにはダンススポーツの一種である“ブレイキン(ブレイクダンス)”が新種目として選ばれたというニュースを見た気がする。
「えっと、確かオリンピックにダンススポーツが正式種目に加わるのって今回が初なんだっけ? はは、凄いよな。今は日本全国の中学校でダンスの授業が必修になってるし、もしかしたらダンス熱が世界規模で広がっていってるのかもな」
「えぇ、確かにそうかもしれないわね。まぁでも私はダンスの授業は皆の前で発表するのがすっごく恥ずかしくて大嫌いだったけど」
「あはは、そりゃあ俺も下手くそなダンスしか出来なかったからめっちゃ恥ずかしかったよ。あ、でもそういえばさ、俺らよりも上の世代の人達ってダンスの授業は必修じゃなかったらしいぜ?」
「えっ!? そ、そうなの!? それは羨ましいわね……」
今は日本全国の中学校で保健体育の授業でダンスが必修科目になっているけど、でも俺らよりも上の世代の人達だとダンスの授業はまだ必修にはなっていなかったらしい。それはちょっと羨ましいよなー。
まぁでも今では大企業が集まって資金を出し合い“ダンスリーグ”とか“麻雀リーグ”とかを設立したりする時代になっているし、もしかしたら世界規模でダンス熱が広がっているのかもしれないよな。俺もダンスとか踊りは見る分にはめっちゃ好きだし。
「それで? そのオリンピックがどうかしたのか?」
「あぁ、うん、それでね、今そのオリンピックに出場するブレイクダンスの日本代表を決める選考会をやってるらしいんだけど……その日本代表の最終候補にケイ君が選ばれてるんだってさ」
「え……えぇっ!? ま、まじでっ!? ケイって……あのケイの事だよな??」
俺は香月の言葉を聞いて衝撃のあまり大きな声を出してしまった。ケイ君とは先ほど俺達が話をしていた“いつメン”の一人だ。
ケイも俺達がヌコヌコ動画で活動していた時期に動画投稿をしていたスポーツ万能な男子学生で、主に“踊ってみた”系の動画を投稿する踊り手だった。
当時のケイは流行りのアニソンや如月サクのオリジナルソングに合わせて様々なダンス技を取り入れた踊ってみた動画を投稿していたっけ。
「へぇ、そりゃあ凄いな! あぁ、確かにアイツは昔からダンスが大好きだったし、ダンスの練習も昔から沢山してたもんな。いやそれがちゃんと報われていってるなんて本当に凄いよ!」
「えぇ、本当にね。それでケイ君からアンタに伝言よ。“オリンピックの代表に選ばれたらちゃんと俺の事を応援しろよ! それまで絶対に失踪すんじゃねぇぞ!” だってさ」
「はは、そんなのもちろん全力で応援するに決まってるじゃん! いやそれは本当に嬉しいニュースだな!」
という事で俺は友人のケイが大活躍しているという話を聞いて自分の事のようにとても喜んでいった。早速今日帰ったら俺もオリンピックについて調べてみる事にしよう。
「ふふ、えぇ、本当に嬉しいニュースよね。あとは……あ、そうそう。これはアンタも知ってると思うんだけど、
「柚姉……? って、あぁ! 確かにあの人も今ネット上で凄い大活躍をしてるよな!」
柚姉も俺達と同じくヌコヌコ動画で活動していた女性で“いつメン”の中の一人だ。ちなみに柚姉は俺よりも二歳年上で26歳の女性だ。
当時の柚姉はヌコヌコ動画の配信者(通称:生主)として活動していた女子高生で、当時は毎日のように若い子達の悩み事を聞いてあげる凸待ち配信やゲーム配信をしていた。柚姉はトーク力が抜群に良くて常に視聴者を飽きさせない事に定評のある配信者だったので、配信者ランキングでは常に上位に君臨し続けていたという凄い人だった。
そしてそんな生主として活動していた柚姉は、そのトーク力やゲーム実況のスキルを買われて最大手Vチューバー事務所の“
という事で今現在の柚姉は“星空アクア”という名前でVチューバーとして活動をしており、世間からはトップVチューバーの一人として必ず“星空アクア”の名前が挙げられる程の人気を誇る超有名Vチューバーとなっていた。
俺は香月と同様に柚姉ともここしばらくの間は連絡を取っていなかったんだけど、でもウーチューブで“星空アクア”の配信はちょくちょくと見ながら応援はしていた。
「確か先月には星空アクアちゃんのチャンネル登録者数が200万人突破したんだよな。いや本当にあの人凄いよな!」
「えぇ、本当にね。まぁでも柚姉はいつかはそうなる気がしたけどね。だってあの人は“誰かとお話するのが大好きだから”っていう理由だけで、十年以上もの間ずっと休まずに面白おかしく配信活動を続けて来たんだもの。その時点でもう色々と凄すぎるわよ」
「はは、確かにそうだよな。いや本当に柚姉は“話すのが大好き”っていう気持ちだけで一生配信出来るのが凄いよなー」
俺はそんな事を言いながら毎日楽しくお悩み相談配信をしていた頃の柚姉を思い出していった。そういえば俺も困り事があった時には柚姉に色々と相談させて貰ってたっけ。
「……はは。まぁでもさ、柚姉もケイも香月もそうだけど、やっぱり好きな事を諦めずにずっと続けている人達ってのは皆ちゃんと良い結果を出してるって事なんだよな。うん、そんな凄い人達と友人でいれる事を俺は誇りに思うよ」
俺はそんな日々頑張っている“いつメン”の皆を思い浮かべながらそんな事を言ってみた。すると香月は……。
「……ふふ、そうね。やっぱりどんな事があってもやり続けていけばいつかは良い事があるってことね。だからアンタもさ……早く新曲を出しなさいよ? ねぇ、“雪丸P”さん?」
「はは……って、え?」
すると香月は優しく微笑みながら、俺に向かってそんな言葉を投げかけてきた。
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