第26話:サポート役を引き受けてまず最初にやろうとしてる事①

「よし、それじゃあ早速ですけど今後についての打ち合わせをしていきましょう!」

「は、はい! よろしくお願いします」


 という事で俺は桜井さんのサポート役を引き受けるためにも、まず最初に一番重要となる部分の話を聞いてみる事にした。


「えっと、それじゃあまず最初に聞いておきたいんですけど、倉瀬スズハさんのモデルやイラストの著作権って今はどうなってますか?」

「え、スズハちゃんの著作権ですか?」


 基本的にVチューバーのキャラクターモデルやイラストというのはそれを作成したイラストレーターさんやモデル制作者さんに著作権があるんだ。


 だからその作成して貰ったVチューバーのキャラクターを使ってグッズ展開や商用利用に使いたいと考えた場合には、その著作権を持っているモデル制作者さんに“利用許諾”を貰う必要がある。


 そしてもちろんウーチューブの収益化というのも立派な商用利用になるため、モデル制作者さんに無断で収益化をしてしまうとトラブルに発展してしまう可能性があるのでそこら辺の話し合いはとても大事だ。


 ただし、色々と新しい事に使いたいと考えた時に著作権を持っているモデル制作者さんに毎回お願いするのが大変だ……という場合には、一番最初にモデル制作を依頼するタイミングで追加料金を支払ってそのVチューバーのキャラクターモデルの“著作権を譲渡”して貰うという方法もある。


 これは名前の通りモデル制作者さんに追加報酬を支払って著作権を譲ってもらうという方法だ。もちろんその場合はモデルの作成依頼費用が割高になってしまうのだけど……それでも何か新しい事にVチューバーのモデルを使いたいと思った時に著作権を保持しているモデル制作者さんに何度も許諾を貰いに行く必要がなくなるというメリットがある。


 いやもちろん著作権を譲渡して貰ったとしても、その制作して貰ったモデルを何か変な事に使用したりするとそれはそれで違うトラブルに発展する事になるのだが……まぁでも俺は変な事に利用するつもりは絶対にないのでここではその話は割愛する。


 という事で倉瀬スズハちゃんのモデルやイラストを使ってこれから何か新しい事をしたいと思った時には都度制作者さんに“利用許諾”を貰うか、あらかじめ“著作権を譲渡”しておいておく必要がある。そうしておかないと著作権の侵害になってしまうからだ。


 だから俺は一番最初に倉瀬スズハちゃんの著作権がどうなっているのかを桜井さんに聞いておく必要があったんだ。


「あぁ、はい! それなら一応最初にモデル制作を依頼した段階で追加料金を支払って著作権譲渡もしてもらっていますよ!」

「あ、そうなんですね! なるほど、了解です!」


 どうやら桜井さんはモデルの制作依頼を出した時にあらかじめ追加料金を支払って著作権の譲渡をして貰っていたようだ。


 桜井さんはあくまでも“趣味”でVチューバーをやっていると言っていたけど、でもちゃんと今後の事も考えてあらかじめ著作権を譲渡して貰っておいたのは素晴らしい判断だな。


「えっと、でも著作権について聞いてくるという事は……もしかしてグッズとかLIMEスタンプとかの作成とかを考えているんですかね?」

「うーん、そうですね、まぁゆくゆくはそういう事も考えていきたいとは思っているんですけど……でも今はその前やっておきたい事が沢山あるので、まずはそっちから動いていこうと思っています!」

「え? やっておきたい事ですか?」

「はい、とりあえず最初にやっておきたいと思っている事が三つあります!」

「えぇっ!? 三つもあるんですかっ!? そ、それは一体……どのような事なんですか?」


 俺がそう言うと桜井さんはビックリしたような表情で俺の事を見つめてきた。


「はい、それじゃあまずは一つ目なんですけど、まずは早急にトイッターで倉瀬スズハさんの公式アカウントを作成しようと思っています」

「え、スズハちゃんの公式アカウントを作るんですか? でも一応ですけど私も個人的に倉瀬スズハちゃんのアカウントは作ってありますよ?」

「あぁ、はいもちろん知っていますよ。そのスズハちゃんの個人アカウントは今まで通り桜井さんが運用していってください。公式アカウントの方は俺が運用していく予定ですので」

「あ、その公式アカウントは友瀬さんが運用するんですね。でもその公式アカウントではどんな事を呟いていくんですか?」

「まぁ基本的にVチューバーの企業やグループが行っているような公式アカウントと同じ運用だと思ってくれればそれで大丈夫です。動画投稿や配信、アーカイブ追加などのアナウンスはこちらの公式アカウントを使っていくようにします」

「あぁ、なるほど! それじゃあ私の持っている個人用のスズハちゃんアカウントは今まで通りの運用で大丈夫って事ですかね?」

「はい、今まで通りの運用で大丈夫です! あ、でもこれからは、スズハさんへの悪質な荒らしや誹謗中傷などに関しては公式アカウントを介して俺の方で対応していくので、今後はそういうアンチ活動をしてる人達の事は全部無視していってくださいね」

「え……えっ!? そ、そんな事までしてくださるんですか……!?」

「はい、もちろんですよ。それに度を超すような酷い誹謗中傷があったらちゃんと法的措置を取る事も考えおきますから。だから桜井さんは今後また酷い荒らしが来たとしても安心してください! その時は俺がちゃんと裏方としてスズハさんを支えてみせますから!」

「友瀬さん……はい、本当にありがとうございます……!」


 俺がそう言うと桜井さんは俺に向けて深くお辞儀をしながら感謝の言葉を伝えてきてくれた。まぁこれである程度は荒らし被害を防ぐ事は出来るだろう。


「それでは続いて二つ目ですが、これからはスズハさんの配信の切り抜きをショート動画にして投稿していこうと思っています」

「あ、ショート動画ですか! 確かに今はショート動画がとても流行っていますよね!」


 ショート動画とは現在のウーチューブ界隈で一番人気がある動画コンテンツだ。動画時間は60秒以内の縦型動画となっていて、つまりはスマホで見るのに特化した動画という事だ。


 今はウーチューブをパソコンで視聴する人よりもスマホで視聴する人の方が多いため、このショート動画が一番再生されるようになっている。


 それにショート動画と配信の切り抜き動画は相性がとても良いので、今までのスズハちゃんの配信を切り抜いてショート動画に投稿するという案は新しい視聴者を取得するためにも非常に良い案だと思う。


「正直私もショート動画は作った方が良いよなってずっと思ってたんですけど……でも今まで学校の都合とかもあってそういう切り抜き動画みたいなのは一回も作れてなかったんですよね。でもやっぱりそういう動画もちゃんと作成しておいた方が良かったんですよね……」

「いや、流石にこればっかりはしょうがないですよ。だって桜井さんは日中は大学に通っているんですし、そんな動画を作る暇なんてなかったでしょうからね。でもこれからは俺の方でショートの切り抜き動画は少しずつ作っていきますから安心してください!」


 今までのスズハちゃんの配信で面白かったトーク内容はほぼ全て覚えているので、後はそれらを切り取ってテロップやSEをつけるだけで良いはずだ。うん、これなら割とすぐに何本かショート動画を作れそうだな。


「は、はい、わかりました……い、いやでも流石に編集を全部お任せしてしまうのは申し訳ないので、これからは私の方でもショート動画の編集はやっていきますよ!」

「あぁ、いやそれは全然気にしないで大丈夫ですよ。60秒以内のショート動画なら編集に時間はそこまでかからないから本当に全然気にしないで大丈夫です! むしろ桜井さんは今まで通り雑談配信を頑張って続けてください! スズハさんが配信を頑張って続けていく事で俺の作れる切り抜き動画も増えていく事になるんですから! だから裏方作業は全部俺に任せて桜井さんは演者として頑張っていってください!」

「は、はい……わかりました! そ、それじゃあその、お手数ですがショート動画の編集もよろしくお願いします!」

「はい、任せてください!」


 という事でこれからやっておきたい事の二つ目までを桜井さんに伝える事が出来た。そして最後に今から伝える三つ目についてが個人的に一番重要だと考えているポイントだった。

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